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[オピニオン]夢想の力

Posted June. 30, 2010 08:41,   

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米国ハーバード大学の心理学部教授であるエレン・ランガーは、ある大学に勤める秘書40人に「この論文を今すぐメールで238号室に送ってほしい」という短いメモを残した。メモ用紙には、誰がこのメモを残したかについてのサインも、説明もなかった。少しだけ考えてみても、内容が変だということがわかるが、秘書の90%が何も疑いもせず、メモに書いてあったとおりに指示事項を履行した。自ら考えずに機械的に行動する人間の本性をうかがわせる有名な実験だ。

◆想像力が、ものをいう時代に機械化の罠に嵌められず、創意的に考え、行動するためにはどうすべきなのか。ニューヨークタイムズ紙の28日付の記事では、夢想こそ、想像力の源だという最新の研究結果を紹介している。人間は、与えられた時間の30%くらいを夢想で過ごす。韓国がサッカーW杯で優勝することを想像したり、ロトに当たった夢を見るのは夢想だ。科学者らは、課業から抜け出す考え、ファンタジーなど、あらゆる種類の夢想をする。

◆米国のサンタバーバラに位置しているカリフォルニア州立大学のジョルダン・スクルラー、フリッツバーグ州立大学のエリック・D・ライチェル、アンドリュ・ラインバグ博士は、人間の考えがどれほど横道に逸れるかを測定するため、ジェーン・オースティンの小説「「センス」と「センシビリティー」の調和」を読んでもらい、実験参加者らの眼球の動きを測定した。眼球の動きが遅くなったり、眼球が文を追うだけならば、考えが横道に逸れていることだ。この際、脳をスキャンしてみたら、課業にまい進するようにする神経網と元来セッティングされた神経網が同時に作動した。課業を行い、夢想しがちな人々が、複雑な単語のパズルのような問題をよく解けた。

◆このような研究結果は、問題が解けない時、問題にかじりつくのではなく、音楽を聴いたり、散策をしたり、手編みをするのがより賢明な方法だということを示唆する。フランスの数学者のアンリ・ボアンカレは、複雑な問題が解けない時には、しばらく問題から離れて頭を休めた。後で見れば、解決策が頭にひらめくことも多くあった。米国のベストセラー作家のスティーブン・キングは、草稿を書いては、一ヵ月以上、引き出しの中にしまっておく。後で取り出してみれば、変な描写とプロットの矛盾を見つけられる。作家が忘れていた時間にも、無意識の中で、一生懸命原稿の推敲作業をしていたのだ。考え方を自由にさせると、生産的な彷徨が始まる。

鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com