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「気候問題で第3の道はない」 英国の権威者が「政治的大妥協を」と一喝

「気候問題で第3の道はない」 英国の権威者が「政治的大妥協を」と一喝

Posted January. 22, 2010 08:17,   

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英社会学者で上院議員のアンソニー・ギデンズ氏に19日、英ウェストミンスター宮殿の上院の建物の入り口で会った。上院議員は、訪問者を直接出迎える慣行がある。下院の建物は、カーテンやカーペット、椅子などの内部のメインの色が素朴な緑色だが、上院の建物は赤色なので、感じが違った。中には、ティールームもあり、パブもある。小さな町のようだ。ギデンズ氏と会う人の多くが、彼の本『気候変動の政治学』の話をした。ギデンズ氏とティールームで向かい合って座った。

——北半球で、今年の冬は特に寒い。それでも、地球温暖化を確信するのか。科学的な真実が、私たちが見て感じることと違う時、どのように地球温暖化の危機が実在すると受け入れることができるのか。

「『ウェザー(weather)』と『クライミット(climate)』を区別しなければならない。ウェザーがその日その日の天気を意味するなら、クライミットは、一定期間の天気の平均を意味する。また、ウェザーが地球上のある特定地域の気候を意味するなら、クライミットは、全地球の気候を意味する。最近、英国は寒かったが、隣国のアイルランドは例年より暖かかった。地球温暖化は、ウェザーではなくクライミットに関係するものだ。地球温暖化のもう一つの特徴は、単純に暑い、寒いではなく、極端な気候パターンが顕著になることだ。オーストラリアは、長い間日照りに苦しみ、英国は以前より頻繁に洪水に苦しめられている。ハイチの地震は、地球温暖化とはまったく関係がないが、私たちに伝えるメッセージは大きい。それは、自然の力がどれほど強力なのかを知らしめている。地球温暖化の影響は強力で、そのうえ誰も避けることはできない」

——『2012』という映画を見たことがあるか。地球の終末を扱った映画だ。私たちは、今日、地球の終末をテーマにした小説や映画、漫画に囲まれている。地球温暖化も、このような流行の一つではないのか。

「その映画は見ていないが、いずれにせよ一般の人は、このようなタイプの地球終末の話と気候変動をほとんど区別できない。しかし、私たちは、フィクションと現実を区別しなければならない。気候変動は現実だ。気候変動は、世界各国の科学者約100人が、『気候変動に関する政府間パネル』(IPCC)を通じて、科学的発見に基づいて下した結論だ。むろん、未来の危険を100%確約することはできない。だからといって無視するなら、危険な状況に直面する恐れがある。『2012』のほかに良い映画を一つ紹介したい。昨年、英国の女性監督プレニー・アームストロングが作った『THE AGE OF STUPID』という映画だ。気候変動を扱ったこの映画で、英国では2010年の温室効果ガスの排出量を昨年より10%減らすためのキャンペーンが始まった」

——昨年に出た著書『気候変動の政治学』で、気候変動は左派、右派の問題になってはならないと書いている。どういう意味か。

「気候変動政策は、国民の多くの支持を得なければならない。気候変動政策は、未来の危険に対処するための新しい経済と社会を作ることだからだ。最も重要な国である米国を見よう。私は、オバマ大統領が政権を取った後、気候変動問題で一部共和党の支持を受けることを期待した。しかし、私たちが目撃したのは、共和党と民主党間の政治の二極化だ。その結果は、グローバルのレベルにも影響を及ぼした。オバマ大統領は、デンマーク・コペンハーゲン会議に出席したが、提案はしなかった。左右対立を克服するのは容易ではない。しかし、可能なところで、何としても『政治的大妥協(political concordat)』を果たさなければならない。気候変動政策は、政権の浮沈と関係なく生き残らなければならず、そのためには、短期的な政権交代に動揺せず、長期的な目標となる『公務領域(civil service)』を確保しなければならない」

——環境運動と気候変動政策は、どのような関係があるのか。

「環境運動は、気候変動を政治のテーマにすることに決定的な貢献をしたが、それ自体は多くの問題を持っている。環境運動は、議会の外で始まり、70年代に主にドイツで発展して、正統政治の対立勢力の位置を占めた。環境運動家が持った極端な脱政権化、ゼロ成長社会、非暴力といった信条は、現実政治と符合しない。『自然に帰ろう』といったスローガンは、守ろうとする人には意味があるかも知れないが、地球温暖化と闘うこととは関係がない。環境運動家は、『地球を救おう』というスローガンをよく使う。しかし、私たちが追求する気候変動政治は、地球を救うことと何の関係もない。地球は、私たちが何をしても生き残る。問題はそこに住む人間だ」

——原子力発電が温室効果ガスの排出を減らすのに貢献すると考えるか。

「原子力は信頼でき、競争力のある環境にやさしいエネルギー源だ。しかし、原子力は、核拡散やテロとも関連しているため複雑だ。結論から言えば、世界の主要国で温室効果ガスの排出削減目標を合わせるために、原子力発電を利用することは必要だと考える。しかし、国際的な核管理の進展がない状態で、原子力発電を大規模に拡大することには反対だ。原子力と核兵器を完全に分離することは不可能だ。私たちは、北朝鮮とイランが原子力で核兵器を作ることを阻止する努力しなければならない。核拡散という点で、中東は特に危険なところだ」

——技術発展が、温室効果ガスの排出を減らすのにどのような役割を果たすべきか。

「技術の発展は、『低炭素経済(low carbon economy)』のために非常に重要だ。私たちは今、再生可能エネルギーの技術を中心に、低炭素経済に進むためのより大きな産業革命の開始段階にある。この20年間、情報技術(IT)が世界の経済を率いたように、向こう20年間は、新しい環境技術が世界を率いるだろう。再生可能エネルギー技術なしで、低炭素経済の変化は実現しない。中国とインドは今、新たな発展モデルを模索している。これらの国が、単に過去の西欧先進国の道に従うなら、環境に及ぼす悪影響は甚大だろう。今日、中国とインドのリーダーシップが徐々に認められている。これらの国が、新たな発展モデルを模索するうえで、技術革新は大変重要だ」

——韓国政府は昨年、「持続可能な開発」という概念に代わって「グリーン成長」という概念を提示した。

「私は、グリーン成長を低炭素経済に進むための出発点だと考えており、その概念に非常に好意的だ。韓国が、広範囲な持続可能な投資に力を入れることはいいことだ。実行することで、雇用を創出することができる。人々が、もはや気候変動政策をコストがかかる頭の痛い問題とだけ考えるのではなく、機会を提供するものと見始めた。その分野で、さらに多くの進展を成し遂げる国であればあるほど、グローバル化した低炭素経済で競争力を持つだろう』

——あなたは「第3の道」の理論家として有名だ。『気候変動の政治学』は、気候変動に関する第3の道を模索することなのか。

「違う。『気候変動の政治学』は、左派、右派の区別を越えた問題を扱ったものだ。第3の道は、グローバル時代に対応して、伝統左派とは違った中道左派の新たな戦略を模索したものだ」

——あなたの勤勉さと根気にはいつも驚かされる。70歳を過ぎても本を2年に1冊、ある時は1年に1冊書いている。(記者が年齢を確認するために「72歳ですか」と尋ねると、「違う」という答えが返ってきた。記者が驚いて、「では何歳ですか」と尋ねると、「29歳」と言った。記者が爆笑すると、ギデンズ氏は、「質問を続けよう」と言った)。どうしてその年齢でそのような仕事ができるのか。

「私が好きなモットーの一つは、ウィリアム・ベヴァリッジの言葉だ。彼は、英国の福祉国家建設の父の1人として、有名な『ベヴァリッジ報告書』の著者だ。彼が80歳になった時、このように言った。『私は今も急進的であるのに十分に若く、今でも大きなことができると信じる』。これが私のモットーであり、私たちが見習うべき良いモットーだと思っている」



pisong@donga.com