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[オピニオン]パウエルの忠告

Posted July. 31, 2009 08:50,   

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1957年夏、米ニューヨーク市立大学の学生だったコリン・パウエルは、ノースカロライナ州・ポートグレイブのROTCキャンプで訓練を受けていた。彼は6週間の訓練評価によって、D中隊の最高士官となった。全体の最高士官はコーネル大学出身の白人だった。キャンプを離れる前日、白人の下士官が彼を呼んだ。「君、どうしてキャンプの最高士官になれなかったのか、知りたくないのか?」。パウエルは、そのようなことは考えたこともないと答えた。下士官が語った。「南部のROTC教官らが大学に戻って、最高士官は黒人だと語れるはずがないじゃないか」。

◆これは、01〜04年、米国初の黒人国務長官を務めたパウエルが経験した、長い人種差別の小さなエピソードに過ぎない。1948年、ハリー・トルーマン大統領が、軍での人種差別に終止符を打つように行政命令に署名した後、軍隊は一般社会よりは人種差別がより少なかったものの、黒人は将校であっても白人と同じ教会に通うことができない上、同じ場所で食事を取ることもできなかった。多くの黒人らはなぜ、自分らを差別する国のために戦わなければならないのか悩んだと、パウエルは自叙伝で振り返る。

◆パウエル元長官が最近、全米を人種差別の議論に巻き込んだ、一人のハーバード大学の黒人教授の逮捕事件を巡り、CNNとの対談番組で、「警察に立ち向かった教授のミスだ」と語り、注目を集めた。黒人であるルイス・ゲイツ教授が夜遅く、自宅の玄関口を開けて入ると、泥棒と誤解した隣人の通報を受けて駆けつけた警察によって逮捕されたのである。バラク・オバマ大統領は最初は、警察を批判したが、すぐ警察に謝罪し、昨日、二人の当事者をホワイトハウスに招いて、「仲直りのビール・パーティ」を開いた。

◆この問題が物議をかもしたのは、黒人大統領の誕生にも関わらず、依然米国内での人種対立が存在しているためだ。そのような意味で、パウエル元長官が、黒人に対して忍耐を要求し、黒人の若者らに、「警察から取調べを受けることになったら、とりあえず協力せよ」と忠告したのは、思慮深い姿である。人種であれ、性別であれ、差別を受ける側は被害意識にのみとらわれてはならず、抵抗や対決構図は問題の解決に役立たないというメッセージを、パウエルは投げかけている。ニューヨーク・ハーレム街出身の彼が、黒人というハンディキャップにも関わらず、軍の最高司令官として「湾岸戦争の英雄」になれたのは、偶然ではないことを感じることができる。

鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com