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[オピニオン]自然債務

Posted May. 07, 2009 08:23,   

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かつて、農村では秋に米を収穫すれば、農民らはほとんどやることが無かった。勤勉な人はわらでカマスを編んだり、草鞋を作るなどの内職をしたが、冬の間、遊んでばかりいる人も少なくなかった。夜になると、あちこちの家の客間では、賭場が開かれた。ひどい時は、住宅や土地の文書までもやり取りされた。賭博による借金は韓国の民法上、「反社会的秩序の行為」(第103条)に当たり、無効とみなされる。賭博の相手に、賭博による借金を返済しなくてもいい。また、借金を返済させることにも、手だてがない。

◆飲み屋で客がホステスの機嫌を取るため、金や金品を渡すと約束したなら、果たして法律上の効力はあるだろうか。この場合も民法第103条の、「善良な風俗に反する行為」に当たり、必ず返済しなければならない債務とは言えないという見方が多い。逆に、ホステスが客から金品を受け取った後、客の気が変わり、返してほしいといわれても、民法上の「不法原因の給与」(第746条)に当たり、返す義務はない。このように、債務があっても、必ずしも返す必要のないケースを「自然債務」という。事実上の債務とは、見なしがたいという意味から「不完全債務」とも呼ばれる。

◆自然債務は、ローマ法から由来した概念だ。ローマ時代には、厳しい方法で契約したもののみ、法律上の債権債務関係を認めたため、自然債務の領域は非常に幅広かった。今も、フランスや中国には、自然債務と関連した名文規定はあるものの、韓国やドイツ、日本の民法にはそのような規定はない。学説や判例に基づいて認められる。盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領が、泰光(テグァン)実業の朴淵次(バク・ヨンチャ)会長から、100万ドルを受け取った容疑の取調べで、同概念を持ち出したという。

◆盧前大統領は、大統領夫人の權良淑(クォン・ヤンスク)氏が100万ドルを受け取り、「返済しなくてもよいはずの自然債務」の返済に使ったと供述した。「返済する必要のない借金返済のため、わざわざ朴淵次氏から100万ドルを受け取った理由は、果たして何なのか」という検察の追及に、「家内に聞いて見なければ分からない」とごまかしたという。「情で借りた金であり、返済しなくてもよいはずが、先方の事情が芳しくなく、返済した」という主張らしい。盧氏は元大統領としての面子も投げ捨て、法律知識を動員し、窮地から抜け出そうとし、さらに深い泥沼にはまりつつあるようだ。

陸貞洙(ユク・ジョンス)論説委員 sooya@donga.com