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[オピニオン]前方型人間

Posted September. 18, 2008 07:00,   

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1935年、ロンドンで開かれた神経科学会で、米国の脳科学者ジョン・フルトンは、チンパンジーの脳の前方、前頭葉の一部を切除する手術を行った結果、チンパンジーの性格が穏やかになったという研究結果を発表した。この講演に感銘を受けたポルトガルの神経科医、エガス・モニスは帰国後、乱暴な行動をする分裂症やパラノイアの患者らに同様の手術を行った。患者はにわかに穏やかになった。この業績を認められ、モニスは1949年、同僚のウォルター・ヘスとともにノーベル医学賞を受賞した。

◆しかし、手術を受けた患者から異常な症状が現れた。患者らは記憶力や運動能力には変化が見られなかったが、判断力に問題が生じていた。何の感動も感じず、衝動的な行動をするようになり、全てのことへの意欲を失っていた。にも関わらず、この手術は第2次世界大戦に参戦し、深刻なショックを受けて、帰国した兵士らにまで行われた。1950年代半ばまで、米国だけで4万人以上の人がこの手術を受けた。脳から切り取っても命には何の影響を与えないとされていたこの部分が、人間をもっとも人間らしくする最重要な部分、前頭葉であることが分かったのは10年の歳月が流れた後だった。

◆三星(サムスン)ソウル病院の羅悳烈(ナ・トクヨル)教授の著書、「前方型人間」が人気を集めてる。脳科学を研究する羅教授は、「企業に司令塔の最高経営責任者(CEO)のように、脳にもCEOがある。それがほかならぬ前方の脳(前頭葉)」と話す。羅教授は、前頭葉認知症患者を対象にした臨床研究を紹介し、人間の身体で前方の脳がどんなに重要な役割を果たしているかについて説明している。衝動抑制障害、博打中毒、セックス中毒、癇癪(かんしゃく)、窃視症、暴食など、すべての精神的症状は前頭葉機能の喪失に起因するということだ。

◆前方型人間の反対側には、喜怒哀楽をつかさどる後方脳の発達した「後方型人間」がいる。典型的な後方型人間は思春期の子供たちだ。10代は、体は大人と同じ大きさだが、前頭葉は身体の中でもっとも機能の完成が遅いので、脳の構造は後方型だ。10代息子や娘が何事においてもやる気がなく、勉強もせず、MP3で音楽ばかり聞いていたら、叱るよりは前頭葉を刺激する環境を整える方がより効果的だ。前方脳を発達させるには、「テレビを消して新聞や本を読むように」と羅教授は薦める。CEOの能力が高くなければ、組織全体の発展が期待できないというのは、脳に限ってのことではあるまい。

鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com