12日ソウル・中区(チュング)にあるマッケンジーのソウル事務所で金さんに会った。元気で気の強い独身女性だろうと予想したが、物静かで落ち着いた声の、2歳の子どもを持つお母さんだった。マッケンジーソウル事務所で働く10人のパートナーのうち、最も若い金さんは女性ならではの繊細できめ細かな性格で新しい分野を開拓してきた。
●「色眼鏡の視線、実力で信頼を得ました」
延世(ヨンセ)大学経営学科で学んだ金さんは1996年、マッケンジーソウル事務所に入社した。1999年にはハーバード大学で経営学修士(MBA)を取得し、2001年に事務所に戻った。
入社当時の1996年までは、まだ女性コンサルタントは珍しかった。
「初めてのプロジェクトでチームの仲間とクライアントを訪問しました。そこは外資系企業でしたが、最初は私を通訳と思っていたようで、コンサルタントだと紹介したら、とても驚いていました。その時、実力で信頼を得るしかないと考えました」。
金さんはある大学病院を担当し、手術・外来診療などで患者中心の運営システムやインセンティブ制度を取り入れた。同病院では診療や手術の件数が増え、患者の待ち時間も減った。売り上げも20%も伸びた。
それだけではない。2002年当時のマッケンジーソウル事務所で医療分野は未開拓の分野だった。金さんは社内に医療分野を研究するチームを作り、2003年には「韓国医療改革2010」と題する本をまとめた。
●「社会に貢献できる仕事がしたいです」
新しい分野へのチャレンジは、クライアントに対してだけでなく社内でも行われた。
マッケンジーは職員に対し、体系的な教育や訓練を実施することでその名が知られているが、それも完璧なものとは限らない。
「コンサルタントは論理的な言い方はできるけど、クライアントが改善案を実践できるよう心で説得するスキルは足りないと思いました。優秀なコンサルタントにインタビューし、彼らのノウハウを共有できるようにしました」。
入社後の年数に応じて身に付けるべき内容をまとめ、「トレーニングカレンダー」というものもつくった。
金さんは酒席やゴルフの代わりに、自分ならではの手法で人的ネットワークを築く。相手の関心分野を察し、それに関係のある書籍を贈るほか、子育ての話も遠慮しない。
「MBAに進むために必要なエッセーの書き方や大学進学で考慮したことなど、教育についてよく聞かれます。私の経験を話していると、自然に親しくなります」
金さんの夫は、マッケンジーのコンサルタント出身で、今は斗山(トゥサン)重工業に勤める李ドンフン常務だ。
「クライアントだけでなく、社会にも役立つ仕事をしたいです。医療分野に特に魅力を感じているのもそのためです。将来的には大学で教え、私の経験を学生たちと分かち合いたいです」
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