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「そう!あの時はそうだった!」7080に捧げる

「そう!あの時はそうだった!」7080に捧げる

Posted November. 03, 2005 07:19,   

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そう。あの時は屋根裏部屋のある家が多かった。子供たちはそこに隠れてマンガを読んだり、親に叱られた後、「ボクが死んだらママは悲しむかな」という幼稚な空想にふけったりした。あの時はそうだった。キムジャン(冬に食べるキムチをまとめて漬ける行事)の時には、母親は庭先の水道端で100株を超える白菜を漬け、たまに路地に捨てられたネコイラズを飲んだネズミを見て、通り過ぎる女子学生たちは悲鳴を上げた。学校では毎週月曜の朝会が行われ、中間考査が終われば成人映画館へ行って、よくトイレ掃除の罰を受けさせられたものだ。

●1979年、14歳の少年のおぼろげな成長期

『愛してる、マルスン氏』(朴フンシク監督)は、このように7080世代(70〜80年代に大学に通った人)の色あせたアルバムのような風景を描く。1979年のソウル。14歳の少年の目に映った世の中には、あたたかい家族愛、過ぎた時間の思い出と懐かしさが切に感じられる。『人魚姫』『私も妻がいたらいいのに』の朴フンシク監督は、今回も特有のあたたかい感性と同情にみちた視線で、人間味あふれる穏かなドラマを編み出した。涙であれ笑いであれ、わざと感動を呼び起こそうとする誇張されたポーズがないため、多少退屈かもしれないが、それくらい楽な気持ちで、自然に思い出の旅に同行することができる。

時代背景は朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の死去から全斗換(チョン・ドゥファン)元大統領の登場という歴史的な激動期。しかし、映画はこれとは無縁に、一日一日を生きていく坊主あたまの思春期の少年クァンホ(李ジェウン)の日常に焦点を当てる。父親がサウジに出稼ぎに行ったクァンホは、化粧品セールスマンである母親のマルスン氏(ムン・ソリ)と妹のヒェスクと暮す。家の入り口近くのアパートで暮らす、白い襟足を持ったウンスク姉さん(ユン・ジンソ)に惚れたクァンホは、一生「美しい彼女」を守ってあげることを決意し、毎日自分の後ばかりついてくる町内の馬鹿ジェミョン(カン・ミンフィ)のせいで人生が狂うといらだったりする。そうしたある日「幸運の手紙」が飛びこんでくる。手紙をもらったら、すぐにまったく同じ手紙を書いて送らなければ不幸が訪れるという。クァンホは母親とウンスク姉さん、ジェミョンに手紙を送るが、みんなこれを無視する。そのせいだろうか。クァンホにとって大切な人々に不幸が迫ってくる。

この作品は、性と世の中の悲しみに、いやおうなく目覚めていく純粋な少年クァンホの夢と懐かしさを描いた成長映画だ。合わせて、当時の暴力的で抑圧的な学校と疎外された人々の生も描かれている。だから、クァンホと母親の関係を含め、片思いのウンスクお姉さん、馬鹿のジェミョン、クァンホのやくざ友達チョルホなどクァンホが結ぶそれぞれの関係は386世代(現在30代で80年代に大学に通い60年代に生まれた世代)が経験してきたその時代を描き出すのに特別な意味をもつ。一本の映画で4パターンの話を盛り込んだのは、やや欲ばりだったか。惜しむらくは、映画の大きな流れである母親と息子の愛情に集中しにくいときがある。

●ああ、帰れない、美しき時代よ!

クァンホ役の李ジェウンをはじめ、ムン・ソリ、ユン・ジンソ、カン・ミンフィなどの演技はみんな安定している。映画の中の風景とアイテムをきちょうめんに取りそろえた監督のしっかりした演出力も抜群だ。改良型の韓国風民家が連なる狭い路地に積もった煉炭灰と、庭でフラフープを回す人、瓦屋根の上で唐辛子を乾すおばさんなどを、通り過ぎながら高いところから撮影した冒頭の場面をはじめ、母親のホームウェア、家のあちらこちらに置かれた生活道具、ソーセージと目玉焼きの盛られたお弁当などあちらこちらに描かれたディテールが、リアリティーをかもしだし、楽しさを加える。

二度とは戻れない時間が、もっとも美しい時代だということだろうか。30台、40台にはあまりにも記憶に鮮やかだが、すでにどこを探しても出会うことの困難なあの時、あの時代をそのまま復元したこの映画が、胸に響く理由もそこにあるだろう。封切りは3日。映画観覧は12歳以上。



mskoh119@donga.com