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私たちは失敗に希望を見いだす

Posted August. 27, 2005 03:01,   

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1979年初め、イギリスの冬は荒涼としていた。街中にはごみが捨てられたままで、あちこちに消防車や救急車が放置されていた。リバプールのある裏通りには、葬儀が行えなかった死体が捨てられていた。

これはストライキのためだった。イギリスが陰湿な地と化しているのに、政府は何の対策も打ち出せなかった。イギリス人はこれを「不満の冬」と呼んだ。

「不満の冬」は1970年以来続いていた。原油高、財政赤字の拡大、繰り返される組合のストライキ、失業の増加、やがては1977年に国際通貨基金(IMF)から借金することになる。イギリスにとって絶体絶命の危機だった。

カン・ウォンテク崇実(スンシル)大学政治学教授は、その危機の原因として、第一にリーダーシップの不在を挙げる。利害集団間のあつれきや対立をうまく調整できない政治のリーダーシップ、危機であることがわからないリーダーシップ、そして自分たちの集団の利害にしか目を向けない組合の無責任など。同教授は「1980年代のサッチャー首相による大胆な改革で危機を乗り越えた例から、多くのことを学び取るべきだ」と強調する。

この本にはイギリスやドイツ、フランス、中国、日本、南米諸国、アイルランド、オランダ、フィンランドなど、いろんな国々の失敗や克服の経験が紹介されている。著者はカン・ウォンテク教授をはじめ、オ・セフン弁護士、李ヨンジョ慶煕(キョンヒ)大学政治学教授、金ホギ 延世(ヨンセ)大学社会学教授、朴チョルヒ・ソウル大学政治学教授、チョン・ジョンホ同大学経済学教授、李ナムジュ聖公会(ソンゴンフェ)大学政治学教授、李ジェスン高麗(コリョ)大学政治経済学教授など、各分野で活躍する重鎮や若手の専門家8人だ。各国の近現代史に見られる光栄や挫折の経験を韓国にとっての他山の石にしたいという趣旨からまとめ上げた。

チョン・ジョンホ教授は、毛沢東による急進的な革命の弊害と、頳小平による漸進的な改革を比較して、中国の近現代史を振り返った。毛沢東がイデオロギーのために経済を犠牲にしていたならば、頳小平は自律と創造に基づいた実利重視の考え方で、経済の急成長を遂げた。同教授は「過去を全面否定するのではなく、客観的な評価が大切だということや、漸進主義的な戦略のよさなどを教訓にすべきだ」と話す。

1980年代に世界経済の制覇を間近にしていながら、1990年に厳しい不況のどん底に落ちた日本の教訓も見落とすわけには行かない。

オ弁護士は1980年代初めごろまで欧州で最も貧しかったアイルランドの大変身に特に注目する。政労使が一体となって開放と外資誘致に取り組み、経済繁栄を成し遂げた自己犠牲的な努力の過程を紹介する。

著者たちはこうした事例研究を通じ、強い韓国を実現するための戦略を示す。その主たる戦略は、▲競争の活性化による競争力の強化、▲実用的で堂々とした外交戦略、▲ソフトパワーの開発、 ▲仕事づくりによる生産的福祉の導入、▲情報化時代の人権保障のあり方、▲現実的かつ体系的な統一対策などだ。

特に李ジェスン教授は、競争を生かした人材育成を強調する。過度な平等主義は低いレベルで平準化した人材の量産につながりがちだから、ソウル大学をつぶすのではなく、ソウル大学並みの実力ある大学を多数育てることで、国際競争力をつけるべきだと主張する。

外国の例ではあるが、裏返せば韓国の姿とも重なる。それぞれの紹介内容が短く、すでによく知られている内容だという点では、多少なりとも残念ではあるが、真剣に私たち自身を省みるきっかけを与える。「今ここ」でのちょっとした間違いが、後に韓国の歴史の大きな流れを変えることもあるということを改めて思い知らされる。まさに歴史の厳しさだ。



kplee@donga.com