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不思議な悲しみのワンダーランド

Posted July. 02, 2005 06:10,   

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「ゴーシュキャビア(Gauche caviar)」というフランス語は、高価なキャビア(チョウザメの卵)を好んで食べる左翼という意味だ。豊かな数人の労組幹部たちと豊かさを守りたい左翼知識人たちが派手な食卓の前で肉を食べながら「革命」を話す場面を比喩したのだ。

『不思議な悲しみのワンダーランド』に出る社設ファンドマネジャーであるイ・ジュンホは、ずる賢い二重価値を持った政治家のチェ・ハンソクを見て「ゴーシュキャビア」と思う。「頭では革命を、唇にはワインを、心に浅薄な権力欲を秘めているという点で(ゴーシュキャビアと)違わない」。

作家の鄭美景(チョン・ミソン、45)氏は2001年にデビューし、翌年に初の長編『ばら色の人生』で「今日の作家賞」を受賞した。鄭氏の2番目の長編である『不思議な悲しみのワンダーランド』は、40代になってしまって「これ以上386(現在30代の人・80年代に大学を通った人・60年代に生まれた人)に呼ばれることができない386世代」の愛と欲望と破局を描いた。

大学時代から夜学活動を一緒にしながらお互いに愛して、尊敬して、牽制してきた男女たちと、その夜学で学ぶ途中に逃げ出して女優として出世しようとするコールガールが出てくる。お金とセックスという有り勝ちなテーマを取り上げながらも、本格文学の慣習に従って話を描いていく。

ジャガーに乗って時速180kmで走ったりするファンドマネジャーのイ・ジュンホは、光束でモニターに届く各データを見ながらお金持ちの金を増やす仕事をする。彼に不明な大金を持って尋ねてきたお客さんチェ・ハンソクは、昔にはカリスマとして輝いた運動圏のリーダー。今は与党のスポークスマンに躍り出た政治家になっている。

コールガールのオ・ユンヒがベッドで迎える顧客の中にはイ・ジュンホ、チェ・ハンソクもいる。特に、チェ・ハンソクは昔の夜学教師時代に「ユンジャ」と呼ばれたオ・ユンヒを妊娠させて流産するように放置したこともある。チェ・ハンソクを憶える後輩たちはブラウン管で熱弁を吐く彼の姿を見ながら複雑な気持ちで話す。

「もはやこの時代には除籍と投獄の経歴が、溢れる米国で取った学位よりマシだ。誰かは大学の掲示板を書いた手でエロ俳優のインタビュー記事を書いて生活を営み、マルクスを出版した友達は本を売った金で江南(カンナム)の中心に邸宅を建てたから、罪のない人がどこにいるだろうか」。

イ・ジュンホはチェ・ハンソクの金で大きな賭けに出る。海の中に沈んだ宝船の引揚に出た会社が操る証券市場の作戦に跳びこむのだ。イ・ジュンホはベテランだが、この賭けは誰もあっという間に倒すことができる。

彼とこの小説に出るすべての人々は悩みのない地、夢のような国「ワンダーランド」に行こうとする。それにもかかわらず貪欲さを手離さない。果してそれが可能だろうか。彼らがしばらく眺めた「ワンダーランド」はどんな姿をしているのだろうか。

この小説は運動圏とファンドマネジャーの世界を書いたが、不安定なところも目立つ。運動圏の突破口を作ろうと飛びこみ自殺を決めた「ヒョンオ」という人物が、自分のために起きた「同志」たちの論争の前で見せる中途半端な受身のような態度がそうだ。「作戦の株式を買ったのに3日でダブルスコアになった」というところも現実的ではない。

しかし、小説全般にかけてくまなく念を入れた内面描写と所々で見られる象徴的な各場面、たまに現実の理を正確に見抜く各文章は、読者たちをつかむパワーがある。



權基太 kkt@donga.com