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「オピニオン」山男の約束

Posted May. 31, 2005 06:32,   

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「囚人のジレンマ」というゲーム理論は、2人の犯人が相手に対する不信のため、約束を守れず結局不利な選択をするという理論だ。2人の犯人が警察に捕まった時、2人とも犯行を白状しないことにした約束を最後まで守れば、2人にとって有利になることができる。しかし、相手が先に裏切って軽い処罰を受けて釈放されるかも知れないという心配から結局2人とも犯行を白状したり、約束を破った人が釈放され、守った人のみ刑を受けることになる結果が生まれるということだ。

◆しかし、ゲームが一度に終るのではなく、2人が引き続き社会で顔を合わせるようになれば、選択は違ってくるだろう。ゲームが一度のみ行われて終れば、約束を守らなかった人が得するかも知れないが、ゲームが繰り返されれば、約束を守らなかった人は裏切り行為に対する社会的処罰を受けるに決まっている。人間関係というのは囲碁やチェスほど「場合の数(number of cases)」が数え切れないほど多いため、いつどこでどんな立場で再び出会うようになるのか知れないのだ。

◆よく約束をし、その約束を守らない職業としては政治家が一番だろう。守れないことをよく知っていながら、「国民との約束」をしておいては後は状況論理で言い紛らす。あの状況では真実だったとか、今は状況が変わったと弁明する。しかし、約束違反と状況論理の弁明のみが繰り返されるうちに、有権者の視線は冷たくなるばかりだ。政治の世界でもゲームは一度に止まらず、繰り返されるからだ。

◆山岳人・厳弘吉(オム・ホンギル)氏はエベレストに登る途中死亡した朴ムテク氏の遺体を必ず収拾して帰ると約束した。厳氏は、その1年後、絶壁にぶら下がって雪だるまになっている朴氏の遺体を捜して命がけで運柩する途中、悪天候のため、臨時の石の墓を作っておいて降りてきたという。山のように重い山男たちの約束は利益を計算するゲーム理論では解けない。万年雪に刻まれた山男たちの約束は気温が変わっても溶けない。

黄鎬沢(ファン・ホテク)論説委員 hthwang@donga.com