智異山の老姑壇を訪ねて…

「智異（チリ）山に悪いね」

河東郡蟾津江（ハドングン・ソムジンガン）辺りの岳陽（アクヤン）の野原が足下に眺められるピョンサ里の智異山の麓。その山の中腹に小説『土地』の「チェ参判（チャムパン、朝鮮時代の従２品の官職）宅」を再現したのを見て、作家の朴景利（パク・ギョンリ）氏がこう話したという。この小説の一環したテーマが「命」であることを思い浮かべれば、山の中腹を切り開いて建てられたこの家を見ながら、作家が繰り返して言ったはずのこの言葉の意味が、十分計り知れるだろう。

▲１３７０メートルの山頂に立てば、智異主脈が堵列したよう〓海抜１０７０メートルの智異山ソンサムジェ。求礼（クレ）と南原（ナムウォン、山内面）をつなぐ険しい山道（地方道路８６１番）が通る白頭（ベクトゥ）山脈の稜線だ。

白頭山脈の稜線を通る道だから、山頂から眺める周囲の風景は口コミの材料になってもおかしくない。上へ老姑壇（ノゴダン、１５０７メートル）、隣へコリボン、萬福臺（マンボクデ）をつなぐ智異山の主脈が鮮やかで、遠くに見える山東（サンドン、求礼郡）の広々とした土地の風水もすばらしい。

しかし、山を大事にしている人なら、この「智異山観光道路」の存在に対して疑問を投げかけるようになる。しかも、今回のソウル大学朴ジョンファ教授チームの調査によれば、観光道路のため野生動物の移動経路が断たれ、食物連鎖が破壊され、結局は生態系が撹乱を起こさざるを得ないことが分かった。

観光道路が通るソンサムジェを出発して、白頭山脈の稜線を踏みながら、老姑壇に登り、自然と一緒に時を過ごす相乗の道を探るのも意味があって、「白頭山脈巡り」にあえてソンサムジェ〜老姑壇コースを含ませた。

河東で蟾津江に沿った国道１９号線を北上すれば、岳陽の広々した野原と花開（ファゲ）祝祭、双渓寺（サンゲサ）入口を経て、求礼の地に到着する。ここから智異山観光道路８６１番に乗り換えれば、泉隱寺（チョンウンサ）を通って曲がりくねっている山道に入ることになる。険しい山道は曲芸に近い精巧な運転を求める。冬は結氷で通行止めになることも多く、事前情報なしに訪れるとひどい目に合うのが普通だ。

それにも関わらず人の足が絶えない理由は簡単だ。ハイキング水準の軽い山登りで大山智異の白頭山脈の稜線も踏んでみることができ、合わせて絶景の雲海と雪景色、般若峰（バンヤボン）・天王峰（チョンワンボン）があまねく登場する素晴らしい智異山景が鑑賞できる老姑壇の入り口であるからだ。

老姑壇を登る道は二通りある。老姑壇待避所までつながっている道路と、山脈の稜線の山道を通って鐘石臺（ジョンソクデ、１３５６メートル）に立ち寄ってから登るコースだ。雪に覆われたセメント包装道路は傾斜も緩やかなので、話を交わしながら歩くのにもってこいだ。一時間ぐらい登ると、華厳寺（ファオムサ）登山路と合流するが、三時間以上の厳しい山登りも辞さない山人に会うこともできる。待避所に着けば、老姑壇峠（１３７０メートル）はすぐそこ（２０分の距離）だ。

▲国の安寧を祈っていた祭祀の跡地には石塔のみが寂しく…〓頂上に上がれば、歓呼と感嘆の言葉を惜しむことができない。正面の般若峰が疲れた登山客を抱いてくれて、主峯の天王峰と細石平田が遠くから目礼をしてくる風景のためだ。天王峰までつながっている３２．３キロの智異主脈の白頭山脈をひと目で確認できるのは言うまでもない。老姑壇の山頂も見上げられる。しかし、生態系の毀損のため通行止めになっている。

峠には頂上のものと同じ石等（祭壇）がある。なので、ある人はここが頂上だと勘違いしたりする。

老姑壇は高麗（コリョ）、朝鮮（チョソン）時代に国の安寧と豊年を祈る祭祀の跡地であり、国内ではまれに見る亜高山地帯の草原。７月末〜８月初め、ヤブカンゾウとチョウセンマツモト、痢疾草が満開する高山花園。智異１０景のうち「老姑雲海」は真夏と秋に見られる。

○旅行情報

▲行き方〓京釜（キョンブ）高速道路〜大田（テジョン）〜大田統営（トンヨン）高速道路△咸陽（ハムヤン）経由〓咸陽分岐点〜８８オリンピック高速道路〜智異山ナドルモック〜６０番地方道路〜馬川（マチョン）〜山内〜８６１番地方道路〜バンソン〜ソンサムジェ休憩所△求礼経由〓チャンス・ナドルモック〜国道１９号線〜南原〜光義（クァンウィ、求礼郡）〜８６１番地方道路〜泉隱寺（チョンウンサ）〜シアムジェ〜ソンサム休憩所

▲山行△ソンサムジェ休憩所〜老姑壇峠〓２．３キロ（１時間〜１時間３０分所要）△老姑壇峠〜頂上〓往復１．５キロ（１時間所要）

▲問い合わせ△老姑壇（頂上）探訪予約〓生態系毀損がひどくて５〜１０月に１日４回毎回１００人の予約客のみに対して開放、１ヵ月〜２日前までホームページで受付△国立公園管理公団（www.npa.or.kr）智異山南部事務所〓０６１—７８３−９１００△老姑壇待避所〓０６１—７８３−１５０７△求礼個人タクシー〓０６１—７８３−５０００

▲「歩いて老姑壇まで」〓生態系を脅威する智異山観光道路の効率的な運営を求めてきた「智異山生命連帯」（www.savejirisan.org）が、「この道を自然に返してやろう」という趣旨で展開している歩行イベントで毎年１０月に開かれる。

趙誠夏 summer@donga.com