Go to contents

[オピニオン]リンゴについての瞑想

Posted November. 14, 2004 23:19,   

한국어

▲イヴは人類最初の「ファム・ファタル」だ。男性を惑わし破滅に導くする妖婦こと「ファム・ファタル」のイメージは「創世記」から始まる。蛇の話に乗せられリンゴを取って食べたイヴはアダムをも誘う。アダムはリンゴを受け取って迷う。食べるべきかどうか。エデンの園の禁忌を破って善悪の果を食べた2人は、裸の恥じらいと善悪、生死の違いが分かるようになる。認識の分別力と原罪説が芽生えた瞬間だ。

▲リンゴは地中海の文明史において重要な象徴である。不和の女神エリスがリンゴを投げ込みながら、「最高の美人へ」と言い残す。戸惑ったゼウスは、トロイ王の息子ぺリスにリンゴを託して責任から逃れる。アプロディテが「リンゴを渡せば、最高の美人であるヘレナをやろう」と提案する。ぺリスはアプロディテの助けを得て、スパルタ王妃のヘレナを拉致する。ホメロスの『イリアス』はギリシャ艦隊がトロイと戦う物語を描いた叙事詩だ。ギリシャが地中海で強大な帝国を築き上げることが出来たのは、洋の東西を結ぶ交通の要だったトロイを手に入れたからだ。

▲「リンゴ」といえば、ニュートンのリンゴも欠かせない。宇宙を巨大な機械と思っていた彼は、落ちてくるリンゴを見て万有引力を発見する。リンゴが木から落ちるようにする力や地球が太陽を一周する力、人間が宇宙の外に飛ばされないことは、すべて万有引力が働いているためだという学説だ。宇宙が神聖ではなく万有引力に満ちている空間だなんて。神への懐疑は人間への懐疑を呼び起こす。人間は単なる考える機械に過ぎないのだろうか。

▲セザンヌはニュートンのリンゴを否定する。彼はリンゴのある静物画を通じて、不確実さによる多層的な時間と空間を表してきた。アインシュタインが相対性理論を発表するより15年も先に、無秩序に変化する自然の姿を絵に描いていた。セザンヌのリンゴが象徴する混沌と不確実さは、21世紀にも通用するキーワードだ。人類の文明を変えたリンゴ。リンゴは排泄の働きを助け、高血圧の予防にもいい果物だ。この秋、甘いリンゴでもかじりながら、格好よくサグァ(韓国語で謝るの意だが、リンゴとも発音が同じ)するのはどうだろうか。相手に謝罪ばかり求めている昨今の国会を見て思いついたことだ。

金ミジン客員論説委員(小説家)usedream@yahoo.com