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理想化された農民の家族

Posted May. 02, 2024 08:18,   

Updated May. 02, 2024 08:18

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18世紀、英国の画家ジョージ・スタッブスは、絵を専門的に学んだことはなかったが、動物画家として名を馳せた。特に、優れた解剖学的知識を基に描いた馬の絵は、乗馬を楽しんでいた貴族たちから大きな人気を集めた。貴族趣向の動物画で勢いに乗っていたスタッブスは、61歳の時に農民の暮らしを捉えた「干し草をつくる」(1785年・写真)を描いた。なぜ急にテーマを変えたのだろうか?

絵には、晴れた日の野原で農民の家族が干し草を運ぶシーンが描かれている。左側の二人の女性は、熊手で干し草をかき集めており、男性たちは車の上に干し草を積んでいる。右側には、車を引く馬2頭が待っている。薄青のドレスを着ている真ん中の女性は、片手で熊手の柄をつかみ、もう一方の手は腰に当てて立ったまま、画面の外の観客を凝視している。仕事を終えた後、しばらく休んでいるようだ。彼らは家族の生計のために、地元の農村社会を維持するために孤軍奮闘している。画家は、農民の家族が一糸乱れずに仕事をする姿を驚くほどリアルに描写した。通常、肖像画の中で静的ポーズを取っていた貴族の家族の姿とは克明に対照的だ。

ならばスタッブスは、働かない貴族たちに対する反発心からこの絵を描いたのだろうか?労働に対する賛美や貧しい田舎の農民たちに対する同情心を表現したかったのだろうか?とんでもない!当時の貴族社会ではロマンチックな田舎の風景画が人気を集めていたので、これに応じただけだ。

スタッブスは農民の生活を捉えたが、理想化して描いた。絵の中の農民家族はきつい労働中なのに、皆服がきれいで優雅だ。女性たちがかぶっている帽子も、作業用とは思えないほど飾りがついている。悲惨な労働現実ではなく、安全で理想化された労働のイメージを表現している。どうせこの絵を購入したり鑑賞したりする人は貴族やブルジョアであり、決して絵の中の労働者階級の人々ではないためだ。

美術評論家