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米国旅行客の飛行時間が長くなった理由

Posted June. 26, 2021 08:13,   

Updated June. 26, 2021 08:13

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最近、グーグルが韓国の大学に提供していたクラウドストレージの無料サービスを撤回し、大きな混乱を招いている。大学が先を争って膨大な講義や研究資料をグーグルクラウドに保存している状況で、2年ぶりに無料政策を覆したからだ。主要大学は、卒業生や退職した教職員のグーグルアカウントを削除するなど対応に頭を悩ませている。最初から無料を欲していたのが問題だったのではないかという指摘とは別に、グーグルの圧倒的な市場支配力が日常に及ぼす影響がどれほど大きいかを実感する事例だ。

この本は、資本主義を極めている米国において、独寡占企業が個人に与える弊害を生々しく映し出している。調査報道専門ジャーナリストの著者は、片っ端から調べた航空、メディア、通信、製薬、金融、医療産業などで様々な独占・寡占の被害例を取材した。例えば、米航空市場の80%以上を4つの航空会社(ユナイテッド、アメリカン、デルタ、サウスウェスト)が占めているため、直航便が減り、シカゴやアトランタなどのハブ空港を経由する路線が大きく増えた。人材と装備が集中しているハブ空港を経由することで経費削減が可能になるからだ。このため、乗客は過去に比べて長く飛行機に乗らなければならない不便を強いられるようになった。米通信大手各社が人口の少ない小都市にはインターネットネットワークを敷かなかったため、スターバックスの駐車場で宿題をしなければならない学生たちの例も紹介している。

もちろん米国には「シャーマン反トラスト法」という独占規制法があるが、レーガン政権以来、政府が同法の施行を疎かにしているというのが著者の主張だ。ここには、「独占による集中が、価格やサービスで消費者の便益(消費者福祉)を増大させる」というエール大学のロバート・ボーク教授の思想が根底にある。グーグルやアップル、三星(サムスン)のような巨大企業の先端製品を思い浮かべれば、もっともらしい主張だ。

しかし著者は、これにだまされてはならないと言う。ノースイースタン大学経済学部のジョン・クォカ(John Kwoka)教授の研究によると、米政府が承認した46件の企業合併例のうち38件が消費者価格の引き上げにつながった。さらに、独寡占企業で働く労働者の賃金も、日増しに下落している現象が統計で証明された。著者はウォーレン・バフェット氏が投資家たちに「われわれは管理者たちに毎年、堀(独占領域)をもっと広げろと言っている」と話したことに触れ、政府と市民が、独占企業の貪欲に立ち向かわなければならないという結論を下している。


金相雲 sukim@donga.com