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あなたを許します

Posted September. 02, 2020 08:51,   

Updated September. 02, 2020 08:51

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「あなたを許すことにしました。私には憎しみもなく復讐心もありません」。息子を殺した犯人に向かってある母親が言った言葉だ。モスクで祈っていた息子をイスラム教徒という理由だけで殺した人を一体どうやって許すことができるのだろうか。

この1年半、母親には悪夢だった。母親は息子が死んだと知らせを受けた時、息子を待った。最後に抱いてキスをするためだった。母親は6日後に息子に会うことができた。しかし、母親が予想できなかったことがあった。息子は頭を銃で撃ち抜かれ、体は引き裂かれ、凄惨な姿だった。母親が考えた別れの抱擁とキスをすることはできなかった。

さらなる悪夢は、よりによってその日が母親の誕生日だった。故郷の中東では母の日でもあった。息子は毎年3月21日になると、花を贈って母親を喜ばせた。その息子が死んだのだ。胸が張り裂けそうだった。母親はこれから、誕生日と母の日に息子から花を贈られることはない。

それでも母親は1年半が経ち、法廷で犯人を許した。母親は終身刑を受けることになる20代の白人青年に向かって言った。「あなたを許します。起こったことは変えられない。息子はもう二度と帰ってこない。私にできることはあなたを許すことだけです」。犯人にも母親がいることだろう。

息子は2019年3月15日、ニュージーランドのクライストチャーチのモスクで白人至上主義者である犯人の銃で死亡した51人に含まれた。母親は犠牲者の親兄弟を代表してそう話したのではなかった。お腹を痛めて産んだ息子の母として、息子と一緒に死んだのも同然の母として許したのだった。許せることは許す絶対的な許しを実践したのだった。そうすることでイスラムが許しとサラム(平和)の宗教であることを示した。