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名作になった習作

Posted September. 20, 2018 08:30,   

Updated September. 20, 2018 08:30

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「これが習作?」。米ニューヨークの現代美術館の壁にかけられているアンリ・マティスの「ダンス」を見た人なら、一度ぐらいは吐き出す言葉だ。横4メートルに及ぶ巨大な絵が習作だということが信じられないからだ。女性たちが手を取り合ってくるくると回りながら踊る姿は、韓国で秋夕(チュソク、陰暦8月15日の節句)の時に踊るカンガンスルレを連想させる。マティスはなぜこのような巨大なダンスの絵を習作として描いたのだろうか?

1909年、ロシアのコレクタ・セルゲイ・シチューキンは、マティスにダンスと音楽をテーマにした絵2点を注文した。自分のモスクワ邸宅の壁を飾るためだった。マティスは、モンマルトルの丘の舞踏会場を訪れて、ダンサーたちが踊る姿を観察した。家に帰るやいなや、彼はダンスホールで聴いた音楽を口ずさみながら、大型のキャンバス上にダンサーたちを描いた。遠近法は完全に無視され、ダンサーたちは、天の上に浮かんでいるかのように軽くて平らだった。詳細な表現を拒否して本質的な3色だけを使ったことも、当時としては破格だった。マティスにはダンスから出てくる人生の喜びとエネルギーを表現することが重要だったのか、人物のリアルな描写は全く考慮の対象ではなかった。巨大なキャンバスの絵は、一週間もならない短い時間で完成された。

興が乗って没頭しなければ、物理的には絶対不可能なことだった。習作だったが、マティスはこの絵がとても気に入って、「ダンス1」とタイトルを付けた。注文者が持っていった「ダンス2」は、女性たちの肌の色が強烈なオレンジ色であり、背景色も「ダンス1」より少し鮮やかで濃い。実は踊る女性たちはマティスの他の絵にも引き続き登場する。裸の人々が森や園で楽しい一時を過ごす姿は、西洋人たちがよく想像していた楽園の姿でもある。

「ダンスは人生であり、リズムだ」。ダンスがすごく好きだったマティスが語った言葉だ。ダンスは、音楽を必要とし、音楽を聴くと踊りたくなる。皆が一緒に手を取り合って踊れる平和で楽しい世界、画家マティスが「ダンス」を通じて見せたかったのは、まさにそのような地上の楽園の姿ではなかったのだろうか。

美術評論家