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ゴッホが耳を切った日の夜、何があったのか

ゴッホが耳を切った日の夜、何があったのか

Posted June. 03, 2017 08:51,   

Updated June. 03, 2017 08:56

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まるで探偵小説や緻密な調査報道記事を読むような錯覚をさせる独特の美術史書籍だ。美術史の理論に一切言及しなくても、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの芸術世界を興味深く理解できる道を開いてくれる。何と7年もかけてゴッホの自害に隠された事実を執拗に追跡した著者の情熱に尊敬の念まで起こる。

1888年12月23日、ゴッホが自分の耳を切ったのはグロテスクな事件としてだけ記憶されるのではない。当時、ある地方紙に短く紹介されたこの事件は、後にゴッホの芸術世界を規定する威力を発揮する。精神分裂と衝動に支配された狂気じみた芸術家のイメージだ。

フランスに移住した英国人の著者が偏見を破ってゴッホの本当の姿を追うことになったのは、非常に単純な疑問からだ。「彼の自画像で包帯が巻かれた耳はどの程度切られたのか」、「切られた耳をなぜ売春婦に渡したのか」、多くの美術史学者がゴッホを研究したが、誰も正解を与えることができない内容だ。

単純な疑問と見えるかも知れないが、問題を解くための著者の処理方法は驚くほど徹底している。ゴッホの行動を全て理解するために、1880年代当時のゴッホの隣人1万5000人の情報を集めた。また、売春婦とされた女性をはじめ住民たちの子孫に会ってインタビューし、膨大な量の19世紀末の公文書も読みあさった。ゴッホが弟妹など知人と交わした800通余りの手紙も分析した。

この過程で著者は、ゴッホの耳が数人の美術専門家の主張のように一部だけ少し切られたのではなく、耳たぶの少しを除いて全て切られたことを知る。さらに、売春婦とされた女性が実は公娼街で清掃のような雑用をしていた若い女性だったことを明らかにする。貧しく暮らす女性と苦しみを分かち合いたかったゴッホの意図が独特の方法で表出されたということだ。著者は「ゴッホと彼の狂気に対する単純化されたイメージはもはや有効でない。ゴッホの創作能力は苦しい精神状態によるものではなく、にもかかわらず頂点に達した」と強調した。



金相雲 sukim@donga.com