文在寅(ムン・ジェイン)大統領は19日、憲法裁判所の所長に同裁判所の金二洙(キム・イス)裁判官を指名した。また、事実上、検察内ナンバー2のソウル中央地検長に尹錫悅(ユン・ソクヨル)大田(テジョン)高検検事を昇進、任命した。金氏は、現8人の裁判官の中で最も進歩的指向で知られている。尹氏は、国家情報院コメント捜査の時に抗命問題を起こした人物だ。文大統領は、憲法裁判所と検察首脳部の人事を断行して政権の考えに合う要人を起用した。「コード人事」と言われても仕方がない。憲法裁判所は大韓民国憲法の最後の砦だ。憲法裁判所は、国会が制定した法案の違憲可否を判断することはもとより、首都移転のように国家の主要政策を判断し、大統領の弾劾まで決めるという点で、国の基本を守る機関だ。このような点で、憲法裁の所長は、一方に偏ることなく自由に開かれた思考を持つ中立的指向の人物が望ましい。
金氏は、2014年の統合進歩党解散審判で唯一棄却意見を出した。金氏は、「統進党の綱領が自由民主の基本秩序に反することなく、一部党員の行動を党の責任に帰属できない」と主張した。しかしRO(京畿道東部)の内乱陰謀まで李石基(イ・ソクキ)氏個人の逸脱と見たのは、いくら少数意見でも憲法の砦でなければならない裁判官の判断を疑わせる。金氏は2015年、全国教職員労働組合を法外労組とした法律条項を合憲決定する時も単独で違憲を主張した。ソウル大学言論情報学科のハン・ギュソプ教授が2014年4月から30ヵ月間の693件の憲法裁判所の決定を分析した結果でも、金氏が最も進歩左派的指向を持つことが分かった。
憲法裁の所長は、違憲かどうかの決定は裁判官一人ひとりの判断だが、憲法裁の運営を主導するという点で、判決に影響を及ぼすこともあり得る。しかも、来年6月の改憲を公言した文大統領が、最も左派的な人を所長に指名したという点で改憲の行方が憂慮される。
尹氏のソウル地検長人事は、検察内部に衝撃を与えた。直ちに辞表を出した李昌宰(イ・チャンジェ)法務次官と金周賢(キム・ジュヒョン)大検察庁次長を筆頭に、検事長クラス以上の幹部が次々に辞任するという観測も流れている。「期数破壊」だが、政権初期の人事刷新として受け入れることができる水準だ。しかし文大統領は、尹氏の任命と関連して、「現在のソウル中央地検の最大の問題である崔順実(チェ・スンシル)ゲートの追加捜査と関連事件の控訴維持を円滑に遂行する適任者を昇進、任命した」と明らかにした。全国最大の検察庁であるソウル中央地検に一種の捜査ガイドラインを提示したと見ることができる。大統領府の検察人事発表は形式から誤っている。検察庁法によると、検事の任命は大統領がするものの、法務部長官が検事総長の意見を聞いて推薦することになっている。しかし、今回はこの手続きがすべて省略された。人事発表も法務部ではなく大統領府が直接行った。
憲法裁判所と検察は、政治的中立と独立性が命だ。これを守るには人事から中立的でなければならず、政治的独立を守って行く人物を要職に就かせなければならない。19日の人事は、これら機関に今後の激しい嵐を予告したという点で、「忖度せよ」との信号を送ったのではないか心配だ。憲法裁判所を左派指向にし、「朴槿恵(パク・クンへ)検察」を「文在寅検察」にすることが大統領の意向でないことを願う。