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[オピニオン]スナイパーの悲劇

Posted July. 11, 2016 07:26,   

Updated July. 11, 2016 07:30

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「タシギ狩りに行く(Going on a snipe hunt)」という英語表現は、無駄骨を折ったり、不可能なことを手がけることを喩える言葉だ。タシギ(snipe、スナイプ)は動作が早く、飛行パターンが不規則なので、なかなか打つのが難しい。スナイパー(sniper)とは、そのようなタシギを打つほど、射撃実力の優れた専門的狙撃手を指している。軍では特等射手のうち、厳しい訓練を経て厳選された一握りの精鋭が狙撃手となる。

◆狙撃手は、銃弾を無駄使いしない。「一発必中(one shot one kill)」がモットーとなっている。集計方式によって差はあるが、ベトナム戦争当時、米軍が敵軍1人を射殺するのに、平均で一般兵士たちは20万発を使ったものの、狙撃手は1.3発で済んだという分析もある。砲弾や銃弾が降り注ぐ戦場でも、いつ、どこから飛んでくるか分からない狙撃手の一発は、致命的な脅威となる。

◆人の命を奪う狙撃手の世界にも記録が残る。フィンランド防衛軍のシモ・へイへは1939年、ソ連軍が侵攻してきた時、望遠照準器を使わずに542人を射殺して、最多狙撃記録を立てた。米海軍特殊部隊のクリス・カイルは、イラク戦争でペンタゴン公認では160人、非公式では255人を射殺した。彼の自叙伝は映画「アメリカンスナイパー」の素材となった。しかしへイへは、ソ連軍の銃弾に左側の顎を貫通され、顔の一部を失った。カイルは2013年、射撃指導の途中、外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていた元海兵隊兵士の銃によって殺された。ガンマンの最後はよくないらしい。

◆米テキサス州ダラス都心で7日、白人警察による相次ぐ黒人銃撃殺害に抗議する平和デモの途中、警察官12人が狙い撃ちされて、5人が死亡する事件が起きた。米国では、警察が銃撃戦を繰り広げるケースはたびたびあったが、狙い撃ちされたのは、ほとんど前例のないことだ。狙いうちは、特定対象を必ず殺すという殺意がその底にある。深刻な人種対立が銃所持の自由と相まって、米国の悲劇を生んだ。

韓起興(ハン・ギフン)論説委員 eligius@donga.com