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[オピニオン]ビラの思い出

Posted October. 27, 2014 04:43,   

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私は小さいとき、大邱(テグ)周辺で暮らしていたため、ビラは耳にはしたが、実際に、目にすることはできなかった。幼児期をソウル周辺やソウルの北側で暮らした友人らの話を聞けば、ビラを拾って交番に持っていくと、おまわりさんが、利口なことをしたと、一本の鉛筆をもらったりしたようだ。身を切るような寒い冬も、子供たちはビラを拾おうと、山野を歩き回ったりもした。鉛筆1本すら貴重だった時代、ビラを見て、北朝鮮にあこがれて北朝鮮に渡る人もたまにはいた。

◆いやというほど、ビラを目にしたのは、1980年代後半、軍隊で服務していたときだ。そのときは、KAL機爆破事件の犯人のキム・ヒョンヒがでっち上げられた人物だと宣伝するビラが、主にまかれた。キム・ヒョンヒの写真や、キム・ヒョンヒが小さいときの自分の姿だと主張したという写真の耳の形とを比較して、異なることを示すビラだけ見ていれば、キム・ヒョンヒは偽者かも知れないという気がした。後で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2003年、MBC番組「PD手帳」は、李正姫(イ・ジョンヒ)統合進歩党の夫のシム・ジェファン弁護士を出演させ、キム・ヒョンヒは偽者だと主張する番組を放送した。その内容は、ビラに出てくる内容とあまり違わなかった

◆ビラは、英語ではチラシを意味するビル(bill)から出てきた。米軍が、第2次世界大戦のとき、日本にまいたビルに、日本人たちが、自分の言葉で片を意味する「片」と結合させ、ビラと呼んだという説が一番もっともらしい。ビラは、情報が遮断された状態で、相手の無知を利用して、宣伝扇動するのに使われるのが一般的だ。しかし、情報が遮断された相手に、真実を伝える手段として利用されたりもする。米軍が、広島や長崎に原子爆弾を投下する前に、日本住民に非難するよう呼びかけたビルがそうだった。

◆北朝鮮は今は、ビラをまく必要すらない。インターネットを通じて、いくらでも韓国社会での心理戦が可能なためだ。しかし、北朝鮮はオンライン上ですら、外部と遮断されている。ここに、心理戦で南北韓の非対称が発生する。北朝鮮が、わが軍でもなく、民間団体が散布するビラに対し、宣戦布告の行為だと主張し、銃で脅かしている。かつて、北朝鮮があんなに巻いていたビラは、果たして何だったのだろうか。

宋平仁(ソン・ピョンイン)論説委員 pisong@donga.com