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脱北者が黄長鎏氏の亡命過程を描いた小説発表

脱北者が黄長鎏氏の亡命過程を描いた小説発表

Posted October. 10, 2013 03:12,   

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2010年10月10日、享年87歳で世を去った黄長鎏(ファン・ジャンヨプ)元北朝鮮労働党書記の3周忌に合わせて「小説黄長鎏」(時代精神)を出した脱北作家のリム・イルさん(47)。1997年、北朝鮮のクウェート駐在朝鮮貿易代表部職員を勤めながら韓国へ亡命。2011年には「小説金正日(キム・ジョンイル)」を発表した。

「1997年3月26日に韓国の地を踏んだのだが、先生は私より1ヵ月ほど後に韓国に来られたんですね。先生の亡命の話を公安当局の安全家屋でテレビのニュースを見て知って、『あれだけの大物も北朝鮮に背を向けるのを見て、北朝鮮体制は長く持たないな』と思いました」

小説を書こうと思い立ったのは、リムさんが黄元書記の1周忌追悼式に参加したころのことだった。「南と北の両方を経験した知識人で学者で、政治家だったし北朝鮮民主化運動の求心だった先生の姿があまりにも簡単に忘れられるのが悲しかった」

小説の上巻は、北朝鮮体制に背を向けた黄元書記が韓国へ亡命する1997年までを、下巻は黄元書記が亡くなる2010年までを描いた。とくに上巻は、黄元書記が脱北を決心するまでの心境の変化にこだわった。「自分が土台を作った主体(チュチェ)思想が政権維持や個人崇拝の道具に転落し、奈落に追い込まれた人民の暮らしに対して力になれない状況下で、先生が感じたであろう無力感と心理的な動揺を想像しながら書きました」

小説には、黄元書記の人間的な面貌が伺えるくだりも少なくない。中国北京で韓国大使館に亡命する機会を伺おうとして、デパートに出かけた黄元書記がお菓子やキャンディを買いながら北朝鮮に残してきた孫娘のことを思い浮かべる場面が代表的だ。「私も、やっぱり平壌(ピョンヤン)に妻と2才の娘を残してきました。娘は生きていれば、すっかりお嬢さんになっていることでしょう。クウェートで亡命を決心するときの複雑な思いを、小説の中の黄元書記に託しました」。

2年近くにわたる執筆は、必ずしも順調ではなかった。黄元書記の講義で、その考えや言葉に接する機会はあったが、小説の主人公にして肉付けしていく作業は別問題だった。「先生は、実に実直な性格の方だったし、学者風の知識人だったので、小説でイメージを作るのが容易ではなかった。字が進まないと、先生の回顧録や著書などを読みながら小説の中の状況でどうしただろうかと、悩み続けました」。

リムさんは、近く小説を持って国立大田(テジョン)顯忠院にある黄元書記のお墓を訪ねる予定だ。「お墓にお酒を注いで、先生のことを描いた小説を書いたことを申し上げたい。次回作は人物小説ではなく、南北の統一過程を描いた小説になりそうです」。