Go to contents

幻想に溺れた権力

Posted May. 17, 2013 05:25,   

한국어

「羽のような権力の切れ端を握ったからと、暴言を吐くのか?政治売春婦?売春婦よりも劣った人間」。民主統合党(民主党)の文在寅(ムン・ジェイン)候補(当時)を支持したという理由で尹昶重(ユン・チャンジュン)元大統領府報道官から「政治的売春婦」と言われた金泳三(キム・ヨンサム)元大統領の次男、金賢哲(キム・ヒョンチョル)氏が、政権引継ぎ委時の尹氏に対してフェイスブックに書いた内容だ。今は「売春婦攻防」よりも「羽のような権力」が目を引く。一時、権力の頂点に立った金氏が、尹氏の末路を予感していたのだろうか。

尹氏は、権力側の中心にいる人物の名前を実名で批判するコラムで有名になった。李明博(イ・ミョンバク)大統領をはじめ多くの政治家や権力者が尹氏のペンによって屈辱を味わった。その彼が、権力の中心に入ると、自分が批判した人々の過ちが塵のように見えるほどのドラマを演出し、墜落した。

尹氏はなぜ大統領の訪米という重大な時にセクハラという話にもならない問題を起こしたのか。普段から好色漢だったのか。異国で浮ついて一夜の逸脱を夢見たのだろうか。心理学者によると、権力者の頭の中には一種の「性的特権意識」がある。権力が大きくなればなるほどそうだ。英雄は好色であり、王は「無恥」と言ったものだが、昔の人も権力のこのような属性を看破していたのだ。成り上がりの尹氏にも、結局は権力が問題となった。

権力の特徴にはスター意識もある。自分は選ばれた魅力のある存在だから、すべての人が自分を好み、崇拝するのが当然と考えるのがスター意識だ。大衆の人気で暮らす芸能人やスポーツ選手がスター意識に陥りやすいが、米コンサルティング会社GMIレーティングスのポール・ホジソン氏によると、政治家や高級官僚、企業最高経営者(CEO)のような人も例外でない。そのため、ホジソン氏は、「権力は媚薬」だと言う。権力を握ると、世の中が自分中心に回るように感じるという。長官を務めたある人物は、「軽く言った話が翌日には報告書として上がってくる」と話した。このような権力の味に中毒になれば、世の中にできないことはなく、女性でさえ思いのままになるという錯覚に陥る可能性があるということだ。

多くの人が朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の「尹昶重起用」を憂慮したが、尹氏はあまり意に介さなかったという。尹氏はむしろ「女性記者が度々電話して面倒だ」と不平とも言えない不平を述べ、自分の力を楽しむ様子だったという。なぜ記者ではなく女性記者なのか。大統領府報道官の尹氏に記者が近づくのは当然だが、なぜ女性記者だけを意識したのか。あるいは女性記者が電話したとしても取材目的と考えられるが、尹氏は自分に魅力があると思ったのだろうか。いくら酔っていたとしても、20歳過ぎのインターン女子大生にセクハラをした意識には、このような歪んだスター意識があるようだ。

権力は「隠れた欲望」の扉を開ける。権力者がその地位に上りつめるまで、絶え間ない努力と節制、徹底した周囲の管理があっただろう。しかし、一旦頂点に立てば、それまで我慢した欲望を噴出させ、これまでの苦痛の補償を一度に受けようとする。やっと権力の座に就いた人があきれた奇行で墜落するのは、権力が欲望の手綱を緩めたからだ。元軍人だったデイヴィッド・ペトレイアス元米中央情報局(CIA)長官の不倫スキャンダルやドミニク・ストロス・カーン国際通貨基金(IMF)専務理事のホテル女性従業員への強制わいせつが代表的だ。

尹氏の行動は彼らと比べても恥ずべきことだ。相手の女性が権力関係で立場の弱いインターンだからだ。権力を誰よりも率先して批判した尹氏は、権力にあまりにも早く酔った。権力に武装解除された尹氏にとって、権力に対する鋭い批判は権力に対する渇望の別の一面だったのかも知れない。