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音漏れを恐れて賛美歌もひろひそと…呼び名も暗号で 中朝国境の韓国系地下教会ルポ

音漏れを恐れて賛美歌もひろひそと…呼び名も暗号で 中朝国境の韓国系地下教会ルポ

Posted May. 31, 2012 07:44,   

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北朝鮮と中国の国境地域には韓国系の複数の地下教会がある。隠れ処のない脱北者らに居場所を提供し、対北朝鮮の宣教活動を目的に脱北者や北朝鮮住民を対象に隠密に布教活動を行っている。

ところが今秋の国家主席交代を控えている中国が、居住外国人に対する取り締りを強化しているなか、隠密に運営されていた韓国系地下教会が公安当局のやり玉にされている。とくに、これらの地下教会は金正恩(キム・ジョンウン)後継体制がスタートした後、脱北者の検挙を強めている北朝鮮の脅威に晒されている。中朝双方から挟み撃ちされている格好だ。東亜(トンア)日報は最近、豆満江(トゥマンガン)周辺の中朝国境地域で活動している地下教会をルポ取材した。

●怯える地下教会の脱北者たち

「讃美歌261章の『静かな朝の国』で今日の礼拝を始めます」。仮にでも歌声が外に漏れ出るのを恐れ、聖書を暗誦するように、息を殺しながら讃美歌を歌い始めた。伴奏はなかった。最近、牧師を含め礼拝に出席しているのは11人だ。10平方メートル(約3坪)はあると見られるこの空間は、壁に掛けられた60センチほどの十字架がなかったら、一般家庭の部屋と変わらなかった。床にはスポンジのパネルを敷いて冷気を防ぎ、玄関には錠が3重で掛けられていた。

国境地域の地下教会は、一般的に2、3人の宣教師が管理している。ここは相対的に規模が大きかった。信徒らは、40代から60代までの男性と女性が混在していた。古ぼけた家を借りて使っていた。一部は脱北者で、一部は有効期限3ヵ月の親族訪問ビザで中国に渡ってからキリスト教を知り、滞在期間を超えて住み込んでいる北朝鮮住民たちだ。

滞在者たちは、夜明けの礼拝から始め、午前の礼拝、午後の聖書学習、夕方の礼拝で1日を過ごしている。二つの部屋に化粧室付きの家の中で1日を過ごしている。脱北者の一人は、「この頃は北朝鮮保衛部要員たちまで中国に入って市内を捜索しているため、外に出掛けることなど考えられない」と話した。

互いに本名を呼ばないのも、仮にでも捕まったときに仲間の名前を白状することを恐れてだ。平壌(ピョンヤン)出身は「ピョン1」(平壌1番)「ピョン2」(平壌2番)といった呼び方をしている。チェ牧師も「先生」と呼ばれている。

ここでの生活は、全的にキリスト教団体からの支援金に頼っている。不足する支援金でぎりぎりの生活が続いている。賃貸料は月800人民元(約15万ウォン)程度で、これに電気料と水道料金として200人民元ほどかかる。

脱北者らは、ここで1年ほどを過ごしていた。その後は、第三国を経由して韓国に入るか、でなければ本人が希望する場合は北朝鮮に帰る。北朝鮮に帰るときは、国境守備隊に渡すワイロと北朝鮮内で地下教会事業を展開するための活動費として、教会から3000ドルほどが渡される。

チェ牧師は、「北朝鮮で実際に宗教活動ができるかどうかは、私たちにも確信がない。だが、少なくとも民主主義と市場の原理は学んで帰る。それだけでも大きな収穫だ」と語った。「サ1」(サリウォン1番)と呼ばれる男は、「2005年に南浦(ナムポ)で信徒100人が一斉逮捕され、一部は死刑になって残りは政治犯収容所に入れられた」と伝えた。

●宣教師400人以上が国外退去に

身の危険を感じているのは脱北者だけではない。宣教師たちも安全問題には神経を尖らせている。チェ牧師も外部との電話連絡は控えている。盗聴を恐れるからだ。電子メールもハッキングを恐れて自制している。

最近、丹東では数年間文化団体を運営していた宣教師の一人がビザを取り消され、事実上韓国に強制帰国された。2年前に脱北者を助けたことを理由に多額の罰金を払わされて国外退去された例もある。ある韓国政府筋は、「今年に入って脱北者問題が国際的に注目を集めてから、中国が取り締まりを強化し、400〜500人の宣教師が国外退去された」と話した。

一部では、中国当局の取り締まりも恐怖の対象だが、より怖いのは中国政府が自分たちの法の網から漏れている外国人は保護していないことだという話も聞かれる。ある宣教師は、「北朝鮮は、中国内の一般外国人に対しては中国政府を意識してテロを起こしていないが、同じ外国人でも中国の法律を違反した場合は例外だ」と話した。宣教師社会では、昨年丹東で死亡した40代の男子宣教師も、このような事情を知っている北朝鮮によって毒針で殺害された可能性が提起されている。



koh@donga.com