朱剛秀(チュ・ガンス)韓国ガス公社社長が昨年10月に任命された直後、労組から「社長の贈り物」を要求された経験を打ち明けた。公共機関が一昨日、李明博(イ・ミョンバク)大統領に新年の業務報告をする席だった。チュ社長は自分を「李大統領による天下りの手先」呼ばわりしながら出勤を阻止してきた労組とやっとの思いで対話を行う途中、「社長になったのだから、贈り物を出せ。慣行ではないか」と言われたという。この要求を拒否したところ、脅迫が続いたという。「贈り物」で妥協し安着した公企業の社長らはこの経験話を聞いて少しは居心地が悪かったのだろうか。
◆李大統領が朱社長の話を聞いてビックリしたというなら、さらに驚かされる。労組が言った「慣行」は10年以上のもので、今も一部で続けられている。03年に任命された韓国電力技術のC社長は、出勤を阻止した労組と裏合意をした。しかし、理事会の反対で別途の給与が支給されなかったため、労組は社長室を占拠した座り込みをして、翌年1月、C社長は理事会の議決も経ずに1700人の職員に54億ウォンの賞与金を不当支給した。労使紛争にまで拡大したため、監査院に摘発された例だ。他の公企業でのように「席」と「もち(金銭的な見返り)」の取引を隠していたら、明るみにならなかったかも知れない。
◆このような脱線は、公企業の労組と天下りの社長の合作品だ。労組の一般的な「闘争」は、自分たちの利益を守ってくれる社長なら歓迎し、そうでない場合は、出勤阻止と裏合意を通じて自分の懐を肥やすやり方だ。天下りかそうでないかはあまり関係ない。昨年もハンナラ党出身の鄭亨根(チョン・ヒョングン)、金光元(キム・グァンウォン)、洪文杓(ホン・ムンピョ)、田溶鶴(チョン・ヨンハク)氏らが順調に天下りで公企業の社長の座に就いた。当該労組が「天下り人事という指摘があるが」などの表現でごまかすと、上級の労総が「労組利己主義」と批判した。いっぽう、いくつかの公企業ではしばらく出勤阻止が続けられた。
◆労組の歓迎は、「統廃合や構造調整がないようにしてくれ」、反対は「前任者のように福利厚生を拡大してくれ」という意味と受け止められる。どちらであれ、天下りのソフトランディング(軟着陸)は費用がかさ張る。公企業の改革を前面に打ち出して登場したこの政府にあっても、天下り社長の追加費用を国民が負担しなければならないのか。この1年間、公企業の騒音に苦しめられた国民は問う。「ずっと同じ問題なのに、どうして直せないのか」。
洪権熹(ホン・グォンヒ)論説委員 konihong@donga.com