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泣く哲学者

Posted July. 25, 2019 07:35,   

Updated July. 25, 2019 07:35

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黒い服を着た白髪の老人が悲しげに泣いている。大きな地球儀の前に両手を添えて、切実な祈りを捧げている。黒の背景を突き抜けて、左から入ってきた強烈な光は、老人の顔に深いしわや閉じた目から流れる涙を浮き彫りにさせる。いったい彼は誰で、なぜ泣いているのだろうか?

17世紀のオランダの画家・パウルス・モレールスが描いたこの男は、古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスだ。万物は変化するという弁証法的思考を持っていた彼は、「善と悪は一つ」「われわれの裡に存在するものはすべて同一なり。生と死、醒と睡、若と老」「同じ流れに二度入ることはできない。」などの言葉で有名だ。謎のようだが、深い哲学的考えが込められた彼の言葉や文章は、ヘーゲルやニーチェのような後代哲学者たちに多くの影響を与えた。

彼は貴族家門で生まれたが、すべての地位を捨てて自由人として生きた。一人で勉強し、自ら探求して哲学的悟りを得たが、当時の思想家たちだけでなく、一般の人にもはばからず批判を吐き出す毒舌家だった。風変りな性格のせいで、いつも孤独で、うつ病に苦しみ、自ら隠遁の生活を選んだ。自然に彼は「闇の哲学者」「泣く哲学者」と呼ばれた。

多くの画家たちが、悲しみと孤独の象徴としてヘラクレイトスの肖像を描いたが、モレールスが描いたこの絵が最も有名だ。31歳に早世して、残した作品は多くないが、彼は描いたヘラクレイトス肖像ほど大胆な構成と強烈なコントラスト、優れた人物表現で、当時も大きな注目を浴びた。

画家は、絵の左側に大きな地球儀を描きいれた。これは世界を象徴する。だから白髪の古代哲学者は今、個人的な悲しみではなく、世界を心配して悲しみの涙を流しているのだ。涙は弱さの表示ではなく、激しい感情の表現だ。現代人が感じる悲しみと孤独、絶望の感情が古代の哲学者が感じたものより少ないはずがない。ならば、我々は何のために涙を流すのだろうか?この絵が投げかけている質問なのかもしれない。