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実践的な憐憫の情

Posted February. 08, 2023 08:36,   

Updated February. 08, 2023 08:36

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温かい話は何度聞いてもいい。『三国遺事』にある「正秀師救氷女」の話、正秀という僧侶が寒さで死にそうな女を救った話もそうだ。寒い冬に起きた温かい話だ。

新羅の哀荘王の時代なので、今から1200年以上前の話だ。僧侶は日が暮れて自分の寺に帰る道を急いでいた。冬のとても寒い日だった。しかし、ある寺の前を通り過ぎる時、乞食の女が子どもを産んで横たわって死にそうになっていた。僧侶は思わず女を抱きしめ、体を温めた。時間が経つにつれ、女の体が温かくなってきた。トルストイの小説『主人と下男』にも似たような場面がある。主人は、雪の中で下男が死にそうな姿を見て、下男の体を自分の体で覆って下男を助ける。『三国遺事』の中の僧侶はもっと困った状況だ。相手は男ではなく、子どもまで産んだ女だ。しかし、そんなことを考える余裕はなかった。湧き出る憐憫の情から、女の体を抱きしめた。憐憫の情が思考を上回ったのだ。トルストイなら、ある存在が僧侶に女の体を抱きしめるように命じ、僧侶はその言葉に服従したと表現しただろう。絶対者の倫理的な命令に従ったといおうか。ともかく僧侶の温かい心、いや体が、死につつある女を救った。女が目を覚ますと、困惑した僧侶は服を脱いで女の体を覆い、急いでその場を去った。僧侶は裸でまだ遠い寺まで必死に走った。そして、筵(むしろ)をかぶって寒さに震えながら一夜を過ごした。

『三国遺事』はここで話を終え、この僧侶は後に哀荘王の国師になったと短く伝えている。僧侶が王の師となったのは、高い学識や学問のためではなく、実践的な憐憫の情のためだった。自分の服を手放して裸になって走り、筵をかぶって夜を過ごす実践的な憐憫の情、その眩しい振る舞いの前では、いくら高い学識や学問も敵わない。