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人類を進歩させた懐疑の力

Posted August. 13, 2022 09:13,   

Updated August. 13, 2022 09:13

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物理学者の間で賛否が分かれる多元宇宙論は、宇宙が一つでなく多数存在すると見る理論だ。

 

英国の理論物理学者ポール・ディラック(1902~84)を称えてできた「理論物理学界のノーベル賞」ディラック賞の受賞者である著者は多元宇宙論者だ。彼は、多元宇宙の観察が不可能でも、宇宙外の他の宇宙の存在の可能性を問う。絶対的な真理はないという信念を持って、データと証拠をもとに科学的誤謬を修正する啓蒙主義科学者だ。著者は、「理想的知識の根源は存在しない。人間は誤謬を発見して除去する客観的説明を深く探究しなければならない」と主張する。

また、スーパーコンピュータの能力を越える量子コンピュータが未来に登場すると展望する。従来のコンピュータは0と1だけを区分するが、量子力学を利用して演算する量子コンピュータは0と1を共存させることができ、人工知能(AI)の開発に必須の膨大な量のデータ処理に非常に効果的だと主張する。

著者は、人間の「確信」を最も警戒しなければならないと強調する。世界的な物理学者リチャード・ファインマンは、「1千年の間は目新しいことは起きないと考える」と言った。著者はこれをリチャード・ファインマンの「失敗」と指摘し、すべての対象にはさらに新たな基本法則が存在すると主張する。著者は、最終章で不変の真理が存在すると信じる人々に考えさせる。「そこ(真理)に到達したという考えを拒否することは、独断主義と暴政を避けるための必須条件だ」。


金哉希 jetti@donga.com