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正常開催を準備する東京五輪、強まる懸念

正常開催を準備する東京五輪、強まる懸念

Posted December. 02, 2020 09:00,   

Updated December. 02, 2020 09:00

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予定通りに開催されるなら、233日後に迫った。来年7月23日に開幕予定の東京五輪の話だ。

新型コロナウイルスの感染拡大で、日本国内でも規模の縮小や大会中止の声が出ている。しかし、日本政府と国際オリンピック委員会(IOC)は動じないムードだ。先月、東京を訪れたIOCのバッハ会長は菅義偉首相に会った後、「スタジアムに観客を入れることに確信を持つことができた」と述べた。五輪に備えてプロ野球の観衆を8割満たす『コロナ実験』まで行った日本政府に対して批判の声があったが、IOCは肯定的に評価したのだ。

バッハ氏は安倍晋三前首相に会って、「あなたがスーパーマリオに扮して、五輪スタジアムの真ん中に現れた瞬間のことが忘れられません。東京五輪の開会式でどんなコスチュームをきているか、想像しています」と話した。安倍氏が2016年のリオデジャネイロ五輪の閉幕式でマリオに扮して現れ、次期開催地の東京を紹介したパフォーマンスに触れ、「来年も期待する」と言ったのだ。安倍氏は「どんなにうちひしがれても、何度でもまた立ち上がる。人間の気高さをたたえる大会になる」と答えた。

 

五輪中止の決定は容易ではない。選手の長年の努力が水の泡になる。また、投入された建設・運営費など日本が最大で51兆ウォンの損失を受けるという見方もある。経済跳躍のために誘致した五輪が不況への入口になり得るのだ。

安倍氏が五輪を通じて得ようとしたさらなる目標も達成が難しくなる。それはまさに来年で10年が経つ2011年の東日本大地震、さらに福島原発事故の悪夢を払いのけて、日本の再建の成功を対外に知らしめることだ。安倍氏は、東京五輪を「復興を成し遂げた東北を世界に示したい」と公言してきた。

五輪はしばしばスポーツや経済的利益以上のものを指向する。大会の成功的な開催は、国民のプライドを高め、愛国心鼓吹の契機になるためだ。日本はすでに1964年の東京五輪でこのような効果を得た。

当時の目標は第2次世界大戦敗戦国のイメージを払拭することだった。通常、開会宣言は大統領や首相がするが、当時は天皇が開会宣言をした。戦争をして周辺国に大きな損害を与えた日本の天皇が降伏宣言から19年後、五輪の舞台で平和と和合のメッセージを伝えたのだ。当時、聖火リレーの最終ランナーは、「原爆少年」と呼ばれた広島出身の選手が務めた。

来年の東京五輪は、福島原発事故の悪夢を払い落とすメッセージを伝えることに集中している。五輪の聖火リレーは「福島Jヴィレッジ」から始まるが、ここは原発事故当時、事故収拾の前進基地だった。大会最初の競技である日本とオーストラリアのソフトボール競技も福島で開催される。

日本政府が五輪を通じて日本人の頭の中に残った戦争や原発事故のトラウマを取り払おうとすること自体を咎めることはできない。しかし、戦争や放射能汚染は日本だけでなく周辺国にも大きな被害を与え得るということが問題だ。第2次世界大戦当時の強制徴用や慰安婦の問題で、日本はまだ責任ある態度を見せていない。福島原発事故も然り。日本政府は五輪開幕前に原発の放射能汚染処理水の海洋放出を行うことを既成事実としている。「国際基準に合わせて汚染水を処理する」というが、安全性をめぐる論議は残っている。

問題は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況でも五輪の正常開催を強行し、汚染処理水の放出を実行すれば、さらなる問題が起こりかねないということだ。五輪が新型コロナウイルスの感染再流行の震源になる恐れがある。十分な安全性の検証なく汚染処理水を放出することは、海洋災害につながりかねない。新型コロナウイルスの状況やワクチンの効果によって、五輪の開催や運営方法も流動的に見なければならない。そうすることが「国際平和と和合増進」という五輪の精神にも合致する。


黃仁贊 hic@donga.com