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「公正裁判のために事件記録を何度も聞きたい」

「公正裁判のために事件記録を何度も聞きたい」

Posted October. 17, 2020 09:10,   

Updated October. 17, 2020 09:10

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「一般法曹経歴裁判官任用の内定者に決まりました」

イヤホンを使用して電子メールを「聞いていた」キム・ドンヒョンさん(38)の顔に明るい笑顔が浮かんだ。彼は視覚障害者1級だ。ノートパソコンにイヤホンを接続後、資料と電子メールを耳で聞く。延世(ヨンセ)大学法学専門大学院(ロースクール)を卒業して、弁護士として働いていたキム氏は20日、裁判官としての第一歩を踏み出す。視覚障害者が判事に任用されたのは、2012年のチェ・ヨン判事(40)に続いて二度目だ。キム氏が視力を失ったのは、2012年5月のことである。ロースクール2年生の時、病院を訪れたが、医療事故で視力を失った。一夜にしてこの世の中が暗闇に変わった。キム氏は、この世がすべて終わったと思った。ロースクールも休学した。通院の時を除いては、家にこもっていた。点字や画面読み上げプログラムを学ぶ考えもしなかった。

それでも極端なことは考えなかった。母親のおかげだった。母はいつもキム氏の傍を守りながら「やればできる」と話した。失意に陥って横になっている息子に、チェ判事のエピソードが盛り込まれた記事を見つけては読んであげたし、動画の講義も聞かせた。キム氏の気持ちも変わった。「どうせ視力は戻らない。同じ障害を持って打ち勝った人がいるから、私も頑張ればできる」

2013年3月、キム氏は、ロースクールに復学した。母親が午前9時に学校に連れて行き、午後10時30分に迎えに来るまで一日中勉強に没頭した。勉強の方法は完全に変わった。すべての授業教材と本の内容は、画面読み上げプログラムから出るコンピュータの声で聞かなければならなかった。先天的障害でないせいで、点字に慣れなかったので、選択の余地がなかった。ノートパソコンにイヤホンを接続して何度も聞いた。

仲間の助けも大きかった。一年上の同期は、過去の筆記内容と資料をすべて渡した。一緒に授業に出る学生たちも、毎日昼食、夕食を一緒にし、教室に一緒に移動した。図書館では常に最も楽な席をキム氏に譲った。惜しみなく助けてくれた仲間のおかげで、彼は2015年2月、優等賞をもらって卒業した。キム氏は、弁護士試験合格後、ソウル高裁で2年間裁判研究員(ロークラーク)として勤務した。以後、ソウル市障害者権益擁護機関で3年間働いた。そして5年以上の経験者対象の裁判官任用に志願して最近合格した。

14日、ソウル江南区(カンナムグ)のカフェで会ったキム氏は、「現在がつらくても希望を持って努力すれば、チャンスが来たときにきちんと手でつかむことができる」と話した。喜びと共に心配も隠さなかった。弁護士として依頼人と相談することと、裁判官として被告を相手にすることとは差が大きい。ややもすれば、被告人が目の見えない自分のために、裁判の過程や判決を信用できなくなるかもしれないという心配だ。キム氏は、「結局、良い裁判を通じて信頼を積むしかない」とし、「国民が納得できる公正な裁判を忠実に実行したい」と語った。


崔예나 yena@donga.com