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権力より芸術

Posted August. 11, 2022 09:20,   

Updated August. 11, 2022 09:20

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王になれなかった王子の運命が、平坦な場合は珍しい。兄弟が多ければ多いほど、血なまぐさい権力闘争があるものだ。スウェーデン国王・オスカル2世の四男として生まれたエウシェン王子は、権力の座を貪る代わりに芸術を選んだ。パリに美術留学してから、風景画家としての地位を固めた。

エウシェン王子は、画家であり同僚芸術家たちの後援者として生きようとしたが、誘惑がないわけではなかった。28歳になった1893年、ノルウェー国王の適任者に推薦されたが、父親の反対で失敗に終わった。この絵は同年夏、スウェーデン南東部のSundbyholm城に滞在する間に描かれた。17世紀に建てられた城は、絵のように海が見下ろせる丘の上に位置している。赤い切妻屋根の黄色い建物は、大都市の華やかな宮殿とは違って、素朴な美しさを持っている。権力に対する誘惑と芸術に対する情熱の間で揺れたのだろうか。王子は晴れた夏の日、巨大な雨雲が押し寄せているシーンを描写した。白い雲は、神の啓示や現実から外れた理想などを象徴するが、暗雲は難関や不吉な予感を暗示する。絵には白い雲と暗雲が半々ずつ混ざっており、当時の彼の苦悩を推察させる。

急進的な思考と傾向を追求した王子は一生結婚もせず、芸術家としてだけでなく多くの芸術協会と公共美術の分野で活動し、スウェーデンの文化芸術の発展を助けた。30代半ばには、ストックホルム近郊のヴァルデマルスデに敷地を購入し、自分だけの芸術の家を建てた。美しい自然と芸術に囲まれた静かな島の家で、82歳まで幸せに暮らした。この世を去り、自分の作品3500点と他の作家の作品450点および自宅と不動産をすべて国に寄贈した。

死後70年が経ったが、王子は依然としてスウェーデン国民から愛と尊敬を受けている。彼の名前を取った「エウシェン王子ヴァルデマルスデ」は、ストックホルムで最も人気のある美術館の一つだ。権力の代わりに芸術を選んだ王子は知っていたようだ。権力はつかの間だが、芸術は永遠だということを。