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「別れる決心」朴賛郁にはまったカンヌ、海外メディア「非常にヒッチコックっぽい」などと好評

「別れる決心」朴賛郁にはまったカンヌ、海外メディア「非常にヒッチコックっぽい」などと好評

Posted May. 25, 2022 09:13,   

Updated May. 25, 2022 09:13

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「朴賛郁(パク・チャンウク)監督の映画は、復讐3部作(『復讐者に憐れみを』、『オールドボーイ』、『親切なクムジャさん』)から始まって全部見ました。今日チケットが手に入らなかったら、明日も来て待ちます」

フランス・ニースの大学で映画学を専攻するイリナ・ニヤさんは23日(現地時間)、第75回カンヌ国際映画祭が開かれているリュミエール劇場前で、2時間も炎天下に立っていた。彼女が持った立て札には、朴監督の映画「別れる決心」の英語タイトル「Decision to leave」が書かれていた。チケットを手にしたいという意味だ。

朴監督が「お嬢さん」(2016年)以降、6年ぶりに出した長編映画「別れる決心」が世界で初めて公開されたこの日、劇場前は、彼の「ビッグファン」を自任する現地人と観光客で賑わった。ハングルで「別れる決心」と書いた立て札を持って、チケットを手にいれようとしていた会社員のアナベル・フューダー氏は、「朴賛郁は、社会現象を洗練されたものにひねる最高の監督だ」と話した。

約2000席規模の劇場は、タキシードとドレスを着た世界各国の観客でいっぱいだった。「カンヌが愛する監督」と呼ばれる朴監督のカンヌのコンペティション部門の4度目の進出作「別れる決心」は、前作とはっきり違っていた。氏は22日、韓国記者たちとの現地懇談会で、「前作に比べて、刺激的ではなく退屈かもしれない」とし、「優雅な古典的な映画を作りたかった」と話した。

映画は凶悪犯罪を捜査する刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と中国人女性・ソレ(湯唯)の関係に焦点を合わせる。ソレの夫が絶壁から落ちて死亡すると、ヘジュンはソレを容疑者と特定して捜査する。ソレはただ落ち着いている。「(夫が)山に行って、帰らなければ心配しました。ついに死ぬかと思って」とぎこちない韓国語を読み上げるだけ。湯唯は、「ラスト、コーション」(2007年)で証明したように、本音の分からない目つきで濃密な演技をこなす。目つきで緊張感の度合いを微細に調節する演技は、世界最高水準。ヘジュンはソレを監視しようと張り込みをするが、望遠鏡でソレを観察する目つきは心配と愛情が込められた密着観察に近い。監督は、ズームインとズームアウトを繰り返し使い、ユニークなカメラアングルで、2人の関係と心理が変化していく過程を細密画を描くように映し出した。

山と海を背景に変死事件を解決した映画は、予測しにくい方向に展開される。「ミジャンセンの天才」と呼ばれる朴監督らしく、片隅の小物一つも無駄に使わないように念を入れた跡が歴然としている。金承鈺(キム・スンオク)の小説「霧津紀行」を映像化したように、霧がかかったような画面は古典美を加える。朴監督は、上映前に「大人らしい映画を目標にした」と、「品位」を強調した。

映画が終わってエンディングクレジットが全て上がった後、5分前後の起立拍手が続いた。コンペティション部門のワールドプレミア試写会にしては短かった。監督と俳優の姿をスクリーンを通じて見せる放送装置が作動せず、観客が彼らの姿をまともに見ることができなかった影響もあった。朴監督は、「長くて退屈な旧式映画を歓迎してくださって感謝する」と、観客に挨拶した。

観客の反応は交錯した。映画的美学の面では世界最高という絶賛とともに、話が難解だという指摘も出た。米ロサンゼルスの映画会社で働くデビッド・リットバック氏は、「映画の中のすべての描写が生き生きとしていて美しかった」とし、「すべてが調和して、まとまって仕上がった」と話した。フランスの観客アルトゥ・ミラー氏は、「朴監督が見せてくれるミジャンセンは最高だが、あまりにも多くの物語とシーンが盛り込まれ、複雑だった。物語がますます難しくなる」と話した。

海外メディアは好評が多数の中、無反応に近い評価を出したものもあった。米芸能メディア「バラエティー」は、「技術的問題が発生する前からも、反応は静かだった」とし、起立拍手が5分に止まったことに焦点を合わせた。英紙ガーディアンは、五つ星をつけ、「緊張と陰謀、感情的対立、おいしく操作したプロットの歪みは、非常にヒッチコックっぽい」と好評した。

今回の映画祭には、「別れる決心」と日本の巨匠是枝裕和が作った韓国映画「ベイビー·ブローカー」まで、2本が、コンペティション部門に招請された。「ベイビー·ブローカー」は26日、初めて公開される。すでに一度最高賞であるパルムドールを受賞した監督であるだけに、「ベイビー·ブローカー」がパルムドールの主人公になるかもしれないという期待が高い。ここにチョン・ジュリ監督の「ダウム、ソヒ」、俳優李政宰(イ・ジョンジェ)の監督デビュー作「ハント」、ムン・スジン監督の短編アニメーション「角質」まで、韓国映画は計5本が招待され、Kコンテンツに対する世界の関心がいつにも増して盛り上がっている。


孫孝珠 hjson@donga.com