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苦しみの所有権

Posted April. 21, 2021 08:10,   

Updated April. 21, 2021 08:10

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苦しみは苦痛を受ける人だけのものだ。他人の苦しみを自分のものとして共感することはできるが、だからといってその苦しみは自分のものにはならない。苦しみにも一種の所有権があるのだ。他人の苦しみの前で限りなく謙虚でなければならない理由だ。

2020年に「太平洋戦争における性契約」という論文を書いた米国人学者マーク・ラムザイヤー氏の問題は、他者の苦しみに対する謙虚さだけでなく、共感能力すら備えていなかったことにある。ラムザイヤー氏は、韓国人「慰安婦」の行為を契約による売春と一般化し、苦しみの中にいる他者をさらに深い苦しみに追い込んだ。

ラムザイヤー氏は、日本の植民地支配期に韓国の歴史を自分たちの都合よく歪曲した日本の植民史学者に似ている。為堂(ウィダン)鄭寅普(チョン・インボ)の「正誣論」を見ると、植民史学者の振る舞いが赤裸々に描写されている。彼らは、韓半島の北側が中国の植民支配を受けたと断定した。平壌(ピョンヤン)近郊で出土した遺物を根拠にそのような論理を展開したのだ。しかし、為堂によると、それは遺物を捏造した結果だった。彼らは目的を達成するために迷うことなく、隠し、手を加え、移し、変えた。定められた結論に追い込んだのだ。なぜそうしたのか。韓半島の北側を中国が、南側を日本が植民支配したという論理を説き、韓民族の歴史を否定し、自分たちの植民主義を正当化するためだった。為堂の「政務論」は、そのような「偽り(誣)を正す書」だった。

ラムザイヤー氏は、正しいか正しくないかに関心がなかった植民史学者に非常に似ていた。自分の考えに合う文献だけを参照にしたことから結論を定めておいて論理を展開することまで似ていた。アイロニーなのは、ラムザイヤー氏が日本人ではなく、日本政府から勲章(旭日中綬章)を受けた米国人ということだ。もしかしたらラムザイヤー氏の最大の問題は、道徳的破綻状態の日本の植民主義を擁護し、被害女性の苦しみに対する謙虚さを失ったところにある。他者の苦しみの前で傲慢になる権利は誰にもない。

文学評論家・全北大客員教授