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屈しない人間のシンボル

Posted April. 15, 2021 08:31,   

Updated April. 15, 2021 08:31

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ピンク色のワンピースを着た女性が、枯れ草が生い茂った野原の上にさびしく座っている。やせこけた両腕でかろうじて体を支えながら、頭を上げて遠くにある自分の家を見つめている。いったい、この女性は誰で、何故草の上で一人でこうしているのだろうか。

アンドリュー・ワイエスは、20歳の時に開催した初の個展で作品を完売し、早くから成功を予感したが、彼に最高の名声をもたらしたのは、31歳の時に描いたまさにこの絵だ。絵の中のモデルは、米メイン州に住んでいたクリスティーナ・オルソンという女性。妻のベッツィの紹介で、すでに7年前からの知り合いであり友人だった。幼い頃から退行性筋肉疾患を患っていたオルソンは、30歳の頃から全く歩けなくなったが、車椅子の使用を断固として拒否した。ここで描写されているように、両腕で下半身を引きずりながら這うことを選んだ。作家は、窓の外で彼女が野原を這い上がって進むのを見て、インスピレーションを得た。オルソンは当時55歳だったが、絵ではとても若々しく描かれている。頭と上体部分を、26歳の妻をモデルにしたからだ。「クリスティーナの世界」というタイトルは、彼女の弱い肉体ではなく、強い精神の世界を意味し、障害を非凡に克服する友人への敬意を表現したものだ。どんな苦難にも絶望しない限り、人間の強い意志と生への態度を示す絵といえる。

ワイエスは、絵を完成させたその年にニューヨーク個展に出品したが、専門家らの反応は冷ややかだった。ジャクソン・ポロックのような抽象画家たちが注目された時期だったため、油絵でもなくテンペラで描いた写実主義の絵は、時代遅れと思われたためだ。しかし、ニューヨーク現代美術館(MoMA)館長のアルフレッド・バーの考えは違った。作品の価値を見抜いて、すぐ購入した。館長の広報のおかげで絵は次第に有名になり、まもなくMoMAの代表所蔵品の一つであり、20世紀米国美術のアイコンとなった。オルソンも障害に屈しない強い人間のシンボルとなり、彼女の家は名所となった。