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マクロン氏の焦りがもたらした警察官撮影禁止法を巡る騒ぎ

マクロン氏の焦りがもたらした警察官撮影禁止法を巡る騒ぎ

Posted December. 04, 2020 08:54,   

Updated December. 04, 2020 08:54

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先月28日(現地時間)午後、フランス・パリのレプッブリカ広場。1ヵ月間続いた新型コロナウイルスのロックダウンが緩和された初日である同日、広場一帯は戦場を彷彿とさせた。「フランスは公権力国家なのか」と叫ぶデモ隊と警察官の間で石や催涙弾が飛び交った。デモ隊が街頭に設置された防犯カメラを壊し、車両に火をつけるなど、周囲は騒然とした。リヨンやマルセイユなど全国で10万人以上が街頭デモを行った。

フランス政府が推進している「グローバルセキュリティー法案」が原因だ。警察官の顔や身元が特定される写真や映像をオンライン上に拡散した場合、禁錮1年、罰金4万5千ユーロ(約6千万ウォン)を科すという。政府主導の同法案は、先月24日に下院で可決された。

報道機関や社会団体は、「表現の自由の侵害だけでなく、公権力の乱用を増幅させる」として反発した。先月21日、3人の警察官がマスクをしていないという理由で黒人に暴行を加える事件が発生し、「グローバルセキュリティー法案」に反対するデモが全国に広まった。

外信は法案の問題点を集中的に報じた。記者も現場を取材して同法案の弊害について話を聞いたところ、意外にも法案に賛成する意見が少なくないことに驚いた。自営業のクレマンさんは、「市民が警察官に暴行を受ける事件よりも警察官が公務中に暴行を受ける事件が多い」とし、「写真を撮影された警察官の身元がソーシャルメディアに公開され、攻撃を受けることも多い」と主張した。

 

公務中に体験したストレスとトラウマで自ら命を絶つ警察官も増加する傾向にある。この10年間、年平均50人ほどが命を絶つなど、フランスの警察官の自殺率は一般人より36%高い。会社員のルイさんは、「『本人の心身を傷つける目的で拡散した場合』という処罰の前提条件が守られれば、肯定的な効果もあるだろう」と語った。

賛否世論を十分に聞いて法案を導入したなら、社会的対立を抑えることができただろうが、マクロン大統領の性急さが問題を大きくしたと批判が出ている。マクロン氏は2017年の大統領選で「中道」を掲げて当選した。しかし、世論調査機関IFOPの10月のアンケート調査の結果、直ちに大統領選が行われる場合、マクロン氏は23~26%の支持率を得る一方、フランス極右陣営のリーダーである国民連合(RN)のルペン党首は支持率が24~27%に達することが分かった。

 

2022年4月の次期大統領選まで1年半も残っていない時に、相次ぐテロや新型コロナウイルスによる景気低迷、移民問題などが重なり、極右指向やポピュリズム政治家の支持率が上がっている。マクロン氏が右派指向の有権者の心をつかむためにグローバルセキュリティー法案など右寄りの政策を無理に推進して対立を大きくしたと指摘されている。

政策や制度に「政治的目的」を優先させたことで、本質は消え、分裂だけが生じた事例は世界各地で繰り返されてきた。幸いフランスは遅まきながら仲裁を選択した。下院は「グローバルセキュリティー法案」を議会で修正することを決めた。今回の事態が、政治的目的を優先させた政策のために対立する社会に小さな示唆を与えることを願う。


金潤鍾 zozo@donga.com