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白紙のノート

Posted November. 30, 2020 08:38,   

Updated November. 30, 2020 08:38

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「白紙のページには無限の可能性がある」(映画「パターソン」中の台詞)

バスの運転手のパターソンは、自分の手帳に毎日毎日、時間がある度に詩を書いた。愛犬マーヴィンがその手帳をずたずたに破ってしまうまでの話だ。落ち込んだパターソンは、散歩道で偶然会った見知らぬ男性から新しいノートをプレゼントされる。そしてパターソンは、そのノートに再び詩を書き始める。

長編漫画を描いている。何年取り組んでいるのか分からない。締め切りが決まっているわけでも、完成後に出版が約束されているわけでもない。その不確かさのためだろうか。最高の漫画を描くという初心は影も形もなく、今は他にすることもなくこれでもしなければと作業室に出勤している。出勤途中、コーヒーなしでは仕事はできないとカフェに立ち寄り、コーヒーを飲む間は手をウォーミングアップしなければとスケッチブックに落書きをする。

そうして過ごしていると、ある日、再び広げた長編漫画の原稿が、私が書いたものではないように感じられた。作業室には長編漫画の原稿をずたずたに破るマーヴィンがいるわけでもないのに、私のそばに明らかにいた何かがいなくなったようだった。原稿は白紙のノートのように遠いもののように感じられた。その時初めて、あまりにも長く手をつけていなかったと自らを恥じ、すでに描いた原稿もすべて無くしてしまいたくなった。

しかし、繰り返される日常は、私をいつのまにか作業室に引っ張っていき、机の前に再び座らせた。それはパターソンも同じだっただろう。毎朝妻とつまらない話をし、バスを運転し、一人で昼食を食べ、犬を散歩させたパターソンに、作業室はまさに手帳だった。大切な手帳は失われたが、彼の詩は手帳ではなく日常のあちこちに存在していた。私の話もそのように毎日繰り返される日常のあちこちに隠れている。時折白紙のノートのように遠くにあるように見えた長編漫画の原稿がもはや怖くない理由だ。