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女性国防全盛時代とハイブリッド戦争

Posted November. 25, 2020 09:10,   

Updated November. 25, 2020 09:10

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「戦闘任務に女性を使うために海兵隊を作ったわけではない。体力の基準を下げる余裕はない」

2013年にジェームズ・エイモス米海兵隊司令官(当時)が、米軍の女性兵士が全ての職種につけるようにし、最前線の戦闘任務にも加わるようにするというオバマ政権の政策を批判して言った言葉だ。多くの男性軍人も戦争の現実を度外視していると不満を示した。賛否両論が激しかったが、オバマ政権はこの壁を取り払った。

7年が経った今、米国は初の女性国防トップの誕生を目前にしている。人事結果は蓋を開けてみないと分からないが、ミシェル・フロノイ元国防次官、タミー・ダックワーズ上院議員、トゥルシー・ギャバード下院議員など、バイデン政権の初代国防長官の予想候補は皆女性だ。最強大国の安全保障の責任を負う米国防総省は、軍人と民間人職員だけで286万人、年間予算が7215億ドル(約800兆ウォン)にのぼる巨大省庁だ。1947年の設立後、28人の長官は皆男性で、女性次官も珍しい保守的で所に、女性最高責任者が登場する可能性が高まった。

主要国と比較すると、米国で女性国防長官議論が今になって起こることは異例に感じられる。インドは1975年に女性国防トップを輩出し、カナダ(93年)、フランス(2002年)、日本(07年)、ドイツ(13年)、イタリア(14年)、オーストラリア(15年)などと比較しても遅れている。20年11月現在も、ドイツ、フランス、スペイン、オーストラリア、インド、デンマーク、オランダ、オーストリア、スイスなどの国防トップは皆女性だ。特に、ドイツ、フランス、スペインは現長官の前任も女性だった。彼女らの絶対多数は軍服務の経験がなく、長官になる前には、医師や法曹人、官僚など他の職業だった。

それでもなぜ各国で次々に女性国防長官が誕生するのか。むろん女性の社会進出が最も大きな要因だが、これに劣らず注目しなければならないのが「ハイブリッド戦争(Hybrid Warfare)」の日常化だ。ハッキング、フェイクニュース、偽情報などが既存の兵器に劣らず破壊力を持ち、正規軍と非正規軍、軍人と民間人、戦時と平常時の区分が消えた現代戦の様相を指す用語だ。通常兵器やハッキングなど伝統戦争であまり使われなかった行為に加えて敵を攻撃するという意味で複合戦争、非対称戦争とも呼ばれる。

代表的な例が、今年9月27日に始まって今月10日に終わったアゼルバイジャンとアルメニアの戦争だ。両国は、ソーシャルメディアを通じて自国兵士が犠牲になる場面をフィルターなく公開し、自国民の戦意を刺激し、国際社会の支持を得ようと努めた。また、両国いずれもドローンを主要兵器として使った。人口と軍事力で優位なうえ、性能が優れたトルコ製ドローンを使ったアゼルバイジャンは空からアルメニアの戦車や歩兵戦闘車両を無惨に粉砕した。反撃もできずにやられたアルメニアは、実効支配していた土地の多くを明け渡すことになった。

21世紀戦争の成否は、軍人間の地上総力戦ではなくサイバー世論戦、ドローンなどの最先端情報技術(IT)にかかっていると言っても過言ではない。戦場でベテラン軍人を養成するのに焦点が合わされた既存の教育や訓練方式では、現代戦の勝利は確約できず、完全に新しい思考と発想の大転換が必要という切迫感が、射撃訓練を一度もしたことがない女性国防トップの誕生を加速化しているのだ。

様々な利害関係者の微妙な心理分析、国際協力の構築、民間人との協力強化など女性が強みを発揮できる分野が増えたという点も無視できない。文化人類学系の名著であるルーズ・ベネディクトの『菊と刀』も、太平洋戦争真っ只中だった1940年代、米国防総省が日本に対する心理戦のために要請した資料を基に誕生した。周知のとおり、ベネディクトは日本を一度も訪れたことがないが、特攻隊「神風」など欧米の観点では理解が難しい日本人の情緒を顕微鏡のように一つ一つ解剖し、米国の勝利に少なからぬ貢献をしたと評価されている。女性特有のきめ細やかさが戦争の勝利にどのように貢献するかを示す事例であり、女性国防長官全盛時代をすでに約70年前に予告した信号と言える。