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45点をつけた先生

Posted October. 21, 2020 08:36,   

Updated October. 21, 2020 08:37

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彼女は学校に通っていたときは、いわゆる問題児だった。家出もひんぱんで、無断欠席も多かった。不安な家庭環境のせいだった。そのためか、成績が最低だった。期末テストでは、化学問題を一つも解くことができなかった。化学式といえば、知っているのはH₂Oしかなかったので、当然だった。それでもただ座っているのが退屈で、解答用紙の裏面に好きな植物について書いて解答用紙を提出した。それでも化学先生は、裏面の落書きに円二つをつけて、45点という点数をつけた。何とか生徒を抱いてあげたかったからだ。

退学させられるとき、職員会議で彼女をかばったのも、その先生だった。「聖書は、百匹の羊のうち一匹を失ったら、九十九匹を残して道に迷った羊を探さなければならないと教えています」。先生は幼い生徒をかばおうとした。生徒がどんなにつらくてそうだろうか。学則を破ったからといって追い出せば、果たして教育と言えるだろうか。さらに、この学校はキリスト教の精神を信奉するミッションスクールである。しかし、学校は最後は彼女を追い出した。それが彼女には恨みとなり、深い傷となった。

学校は九十九匹の羊のために一匹を追い出したが、先生はあきらめなかった。学校から追い出されて演劇の道に入った教え子が公演をするときや、教え子の戯曲が公演されるたびに劇場を訪れた。肺がんの手術を受けて入院と退院を繰り返す時も、公演を見に来て教え子を祝福した。励ましのはがきも忘れなかった。「ミリの声で、ミリの歌を生涯休まず歌ってほしい。その歌に共感する人、その歌に勇気を得た人が必ずいるでしょう」

彼女は、先生の愛と応援を受けながら有名な作家となった。芥川賞を受賞し、英語に翻訳された小説「JR上野駅公園口」で2020年に全米図書賞の最終候補にノミネートされている在日同胞・柳美里(ユ・ミリ)作家がその生徒だった。彼女は歳月が流れて故人となった木田先生を追悼する会では、道に迷ってあてもなくさまよった孤独な羊を唯一抱いてくれた恩師を懐かしみながら、心の中で泣いた。