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コロナワクチンの争奪戦でも格差の恐れ

Posted August. 12, 2020 08:35,   

Updated August. 12, 2020 08:35

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「私は選挙のためにこれをやっているのではない。多くの命を救いたいからだ」

ドナルド・トランプ米大統領は最近、新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)のワクチン開発に拘る理由についてこう打ち明けた。再選のためにワクチン開発にすべてをかけているという評価が出ると、改めて命の価値を強調したのだ。

 

その一方で彼は、「大統領選挙前にワクチンの開発ができるだろう」と強調していることも忘れなかった。このような理由で、米大統領選挙の終盤変数である「10月のサプライズ」は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)」国務委員長との再会ではなく、ワクチン開発だという言葉も出ている。米国内の感染者が500万人を超えた危機的状況で、ワクチン開発成功、無料接種などを宣言して、トランプが選挙終盤の逆転に出るという話だ。

このような空気を反映するように、米政府は最近、激しくワクチンを総なめしている。英アストラゼネカとオックスフォード大学、米ファイザーとドイツのバイオエンテック、フランスのサノフィー英グラクソ・スミスクラインなどのグローバル製薬会社や大学に連絡して、成功可能性の高いワクチンの青田買いに出たのだ。米国はすでに7億回分のワクチンを確保した。約3億3000万人の米国全人口が二回以上打たれる規模だ。このような物量を確保する前に、94億ドル(約11兆2000億ウォン)も注ぎ込んだ。

一部の先進国もワクチン確保に加わっている。英国は、フランス製薬会社・ヴァルネヴァとワクチン生産設備の投資契約を結んで1億回分を受けることにするなど、1億6000万回分を確保した。日本は、ファイザーからワクチン1億2000万回の供給を受けることにしたし、アストラゼネカと追加で1億回分の供給交渉を打診している。新型コロナのワクチンはインフルエンザのような周期的な接種が必要だという予測まで出ている状況で、各国がワクチン倉庫満たしに打ち込んでいる。

問題は、このような経済的大国のワクチン青田買いが生産量の予測値さえ超えていることだ。例えば、開発や生産前に「問わず買い占め」をすることだ。英医薬市場調査会社・Airfinityの集計によると、米国、英国、日本などが製薬会社から先買いしたワクチン規模は13億回分で、2020年上半期まで生産されると見られるワクチン全体生産量の10億回分を上回る。世界の人口が78億人であることを勘案すれば、ある国の国民は複数回もワクチンを打ってもらうことができるが、他の国の人々は見物すらできないワクチンの二極化現象が現実化する兆しを見せている。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「ワクチンの民族主義はよくないし、役にも立たない」としながら「私達がすべて安全になるまで、いかなる国も安全ではないだろう」と主張した。ワクチンの公共財性格を認めて、全員がアプローチできる時に真の意味で危機から脱することができるという訴えだ。

しかし、このような訴えが、冷酷な国際社会できちんと動作するかは不透明だ。ワクチンの確保に最も積極的な米国は、すでに先月、WHOからの離脱を公式通知して独自の路線を明確にした。欧州連合は4月、「新型コロナ対応」の決議案を披露してワクチンの公共財役割を強調するかのようだったが、その後、アストラゼネカとワクチンの事前購入契約を終えた。中国バイオ企業・シノバックは、新型コロナ・ワクチンの3相臨床試験をブラジルに次いでインドネシアで行いながら、独自開発に拍車をかけている。このような理由で、フィリピンなどの一部の東南アジア諸国は、南シナ海の領有権紛争はしばらくさておき、中国に「ワクチンの提供を訴えている」状況だ。ワクチンの所有自体が国際秩序を率いる一つの覇権としてすでに働いている。

このような状況で、韓国は、グローバル製薬会社とワクチン供給契約をまだ結んでいない。国内製薬会社のワクチン開発は初期段階だ。政府はWHO、感染症革新連合(CEPI)が主導したワクチン供給協議体「COVAX」の加入に乗り出したが、これによってきちんとワクチン供給を受けたとしても、国民全体の20%のみ受けることができる。5000万の国民のうち1000万人しかワクチンに打たれることができないという意味だ。

ワクチンの確保は国民の命と直結するだけでなく、新型コロナによって低迷した経済を一日も早く回復させるのに決定的な役割を果たせる。技術力が足りなければ、外交力を総動員してでもワクチンの確保に集中しなければならない時だ。


黃仁贊 hic@donga.com