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世界で最も低い記念碑

Posted August. 06, 2020 10:05,   

Updated August. 06, 2020 10:05

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「今一席ずつ空けて座っていらっしゃるでしょう?見慣れないことだと思いますが、それも慣れることでしょう」

ソウル芸術の殿堂オペラ劇場で1日に開かれたコンサートで、輝く銀色のドレスを着て舞台に立ったオク・ジュヒョンは言った。観客がすべてマスクをつけて、席を空けて座った風景は、観客はもちろん、彼女にも新しい体験だったようだ。

「知っていらっしゃいますか?マスクをつけば、観客の方々の表情が意外によく見えるんです。目がはっきりみえますので。だれかの目がキラキラ輝く瞬間も見えるほどです。これからも(マスクの)白い波を見続けることができたらいいですね」

彼女の言葉には、観客に再び会えたことへの喜びが濃く滲んでいた。東南アジアのスコールのようにバケツをひっくり返したような大雨が降った日だったが、一席ずつ空けた客席のほとんどは、観客でいっぱいになった。文化生活を渇望していた人たちが、我先に公演会場を訪れたようだった。

先月22日から首都圏の国公立公演会場、美術館、博物館がオープンした。首都圏以外の地域では、新型コロナの状況に応じて運営再会時期を調整している。

以前のように再び公演を見て、展示を観覧できるようになり、嬉しいばかりだ。ただ、守るべき点もある。会場には、以前に比べて少し早目に到着するのが良い。検温をして、オンラインで問診票を作成後、その結果が入力されたQRコードをチケットと一緒に提示してはじめて入場が可能になるからだ。この日、オペラ劇場の入り口では、「QRコードは、どうやってやればいいですか?」と尋ねる高齢者の観客も相当いた。従業員たちは、1部、2部の公演が始まる前に、客席のあちこちを回りながらマスクを顎まで下げた観客に、「鼻を覆うようにマスクを上げてください」と頼んだ。

現在公演が行われているミュージカル「レント」の俳優と制作陣は、「今日が最後の公演になるかもしれない」という思いで、一日一日の舞台をこなしている。貧しい若い芸術家たちが、将来は見えないが、夢を歌うというこの作品は、実際に公演を行うことができるかどうか分からず、誰もが気をもみながら練習した。幸いなことに公演が始まったが、今月23日に幕を下ろす時まで一瞬も安心できない。俳優、制作陣、観客の誰か一人でも新型コロナに感染すれば、すぐに公演を中止しなければならないからだ。

米国出身でスペインに居住する「レント」の協力演出家・アンディ・セニョール・ジュニアは、アイビー、チェ・ジェリム、チョン・ウォンヨンなどの韓国人俳優とスタッフに、「外国は会場がすべて閉鎖されているので、私が知っているすべての人々が仕事を失った。今舞台に立つことができるのは本当に祝福だ。絶対に当たり前だと思ってはならない」と語った。「今日という日があるだけ(No Day But Today)」というレントの主題歌が特に胸に響く昨今なので、一回ずつ公演が終わるたびに、俳優たちは胸が熱くなって涙するという。

「街でキスをしながらデートする恋愛映画が、今はファンタジー映画になってしまった」というミン・ギュドン監督の言葉は、新型コロナによる変化を圧縮的に表している。

日常が慎重に再び始まっている。以前は当たり前だったことが、どれだけ大切だったのかを改めて気づかされることになる。いや、多分当たり前のことなど最初から存在していないのかも知らない。ただで与えられることは何もないから。


孫曉林 aryssong@donga.com