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ベートーベンの弦楽四重奏16番に「謎」が隠れている

ベートーベンの弦楽四重奏16番に「謎」が隠れている

Posted July. 14, 2020 08:33,   

Updated July. 14, 2020 08:33

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2週間前にベートーベン交響曲第5番を覗いたのに続いて、またベートーベンですね。そうしなければならないのででしょうか?そうしなければなりませんでした。

今月22日から8月8日まで、第17回平昌大関嶺(ピョンチャン・テグァンリョン)音楽祭」が、「そうしなければならない(Es muss sein)」をテーマに開かれます。「そうしなければならない」は、ベートーベンが自分の最後の弦楽四重奏16番へ長調の楽譜に書き入れたフレーズです。これに先立って、京畿(キョンギ)フィルハーモニー管弦楽団は、18日と19日にこの曲のオーケストラバージョンを音楽監督・マッシモ・サネッティの指揮で演奏します。

この曲の4楽章の楽譜には、実際に演奏楽譜の上に簡単な音符の動機と短いフレーズが書かれています。ベートーベン本人の字で「ようやく下した決心」という言葉と共に、「そうしなければならないのか?(Muss es sein?)」「そうしなければならない!(Es muss sein!)」という言葉を書き入れました。ベートーベンは何の話をしたかったのでしょうか。

これまでいくつかの解釈が出ました。ベートーベンの秘書・シンドラーは、「ベートーベンが『メイドの週給を上げなければならないのか』について悩んでいた」と伝えました。前回言ったように、シンドラーは嘘をよくついたので、真剣に聞く必要はないでしょう。

似たようなトーンのコミカルな解釈では、ベートーベンの友人だったデムブショという人が「楽譜をちょっと見せて」と言ったところ、ベートーベンが「お金を払いなさい」と言ったので、デムブショが「そうしなければならないのか?」と言い張ったら、ベートーベンが「そうしなければならない。財布のひもを緩めなさい」と大笑いしながらこの言葉を書き入れたという話もあります。この話は、ミラン・クンデラの小説「存在の耐えられない軽さ」に引用されて広く知られました。

別の話では、ベートーベンが三つの楽章を書いた状態で、出版業者・シュレシンガーから「早く最後の楽章を書かなければ」と促されたので、ベートーベンが「そうしなければならないのか?」という途中、「そうしなければならないだろう」と決意したという説もあります。

一方で、「ベートーベンはそのような軽い考えではなく、創作理念の根本的で、重大な変化を模索してそのような悩みを表現したのではないか」という解釈も出ます。ところが、当時のベートーベンは大きい作曲哲学や手法の変化を考えるほど健康が良くありませんでした。この弦楽四重奏曲を書いた翌年にこの世を去りました。

サネッティ音楽監督は、この言葉について、「各自が独自の方法で解釈するのはいかがでしょうか」と提案しました。それとともに「私には『それ』が音楽だ。音楽でなければならない!生活でなければならない!私たちは以前に享受した日常に戻らなければならない。私たちの魂にあまりにも重要なことを再び探さなければならない」と言いました。平昌大関嶺国際音楽祭のソン・ヨルム芸術監督も、「2020年の困難な状況の中で、このフレーズの重みが私たちと触れ合っていると考え、今年の音楽祭のテーマに決めた」と言いました。

一言を付け加えるなら、ベートーベンがこの「謎」のフレーズを書いてから1世紀後、英国の作曲家・エドワード・エルガーが「謎変奏曲」という管弦楽曲を書きました。彼は、「曲全体を貫く謎の主題がある」とし、それが何なのかは明らかにしませんでした。だから、私は一つの「説」を提案します。「謎の変奏曲」のテーマの最初の部分の音符を上下にひっくり返す「転位・inversion)」手法を使えば、ベートーベンの「そうしなければならない」の動機と同じです。エルガーは100年前の大作曲家の謎のようなフレーズに対して、自分の「謎」でオマージュしたのではないかと考えてみました。


ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com