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マーケティングの鬼才

Posted July. 02, 2020 07:47,   

Updated July. 02, 2020 07:47

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文在寅(ムン・ジェイン)政権発足からまだ1年も経たない2018年2月。金相坤(キム・サンゴン)前社会副首相兼教育部長官は、国会教育文化体育観光委員会に出席し、窮地に立たされた。教育問題ではなく住宅問題だった。ある野党議員が「文政権の人々が住宅価格の上昇で得をした」とし、「居住してもいない大峙洞(テチドン)のアパートをなぜ持っているのか」と問い詰めた。金氏は「売ろうとしたが売れない」と答えたが、「嘘をつくな。昨日不動産に行ったが、売る物件がなく困っていた」と言い返された。

結局、金氏は3月にレミアン大峙パレスアパート(94.49平方メートル)を相場より1億5千万ウォン以上安い23億7千万ウォンで売った。最近のこのアパートの相場は国土交通部に申告された実取引価額基準で35億ウォン。金氏は同年9月に辞任した。仮定だが、6ヵ月間家を売らずに持ちこたえたなら、少なくとも11億ウォンの金銭的損失はなかったという計算になる。

先月30日、丁世均(チョン・セギュン)国会議長が住宅処分の勧告にもかかわらず多住宅を保有している大統領府参謀に対して、「公職者が率先するのが良い」と述べた。金氏の前例もあり、売ろうとすると上がるかもしれないし、売らないと憎まれるので、当事者とその妻たちは眠れない夜が続くかも知れない。住宅価格の下落が確実で、反騰の可能性もないようなら、判断の早い大統領府参謀は秘書室長や国会議長が売るなと言っても売るだろう。家を売る行為がまるで犠牲のように率先しろと催促することが、当分の間住宅価格は落ちないという信号と読めるかもしれない。

6・17不動産対策が出た直後、蚕室(チャムシル)付近の不動産仲介業者は日が沈むまで契約書の作成に追われたという。今後価格が上がるので、規制が発効する前に買おうという需要が押し寄せたためだ。取引許可制という劇薬処方が、市場では政府が住宅価格の引き上げを保証したも同然と受け止められたのだ。実際、6・17対策後に出た週間統計で、住宅価格は落ちるどころか売買価格、チョンセ価格いずれも上昇したことが分かった。

最近、大統領府と与党に憎まれた洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相が退き、そのポストに金賢美(キム・ヒョンミ)国土交通部長官が就くという噂が流れた。経済の門外漢が経済指令塔になったことは一度もないため、話にならない怪談だと思われた。しかし、その後、金長官が相次いで番組に出演し、「政府が保有税など不動産税制の不十分な点に手を加えなければならない」と話すのを見ると、あながち怪談ではないかもしれない。

いくら実力のある長官でも、住宅の需給を担当する国土部長官が経済副首相をさしおいて税制を論じることはまれなことだ。保有税引き上げに続き、分譲価格上限制、銀行融資の禁止、取引許可制まで出た状況で、事実上、住宅価格との戦いを宣言した政府が、経済の初心者だが住宅価格だけは抑えるという金長官を経済副首相に座らせるとしても大きく驚くことではなさそうだ。

ゴルフのユーモアに、「プロは見た所にボールが行き、アマチュアは打った所に行き、初心者は心配した所に行く」という話がある。まるで不動産対策に対する現政権の意欲過剰と、望む結果の反対になる初心者の実力を遠回しに言っているようだ。

政治はそうとしても、経済はごり押しでできるものではない。国の経済に不動産しかないなら分からないでもないが、一方で無理をすれば他片で必ず副作用が起こるものであり、政府が望むように市場が従うこともない。塞げばよいということではなく、うまく流れるようにすることが治水の基本であり、ひいては世の中の道理なら、不動産対策もこれと同じでなければならないのではないか。


金光賢 kkh@donga.com