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「距離置き」の舞台で飾ったこの時代のための聖歌

「距離置き」の舞台で飾ったこの時代のための聖歌

Posted June. 02, 2020 09:21,   

Updated June. 02, 2020 09:21

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「なぜ国々は騒ぎたち、国民はむなしくつぶやくのか?」

旧約聖書の詩篇2篇である。「国々は騒ぎたち」が尋常ではない。世界最強の二国が激しい破裂音を出している。2020年は、新型コロナウイルス感染症に劣らず、列強の角逐が新しい様相を帯びる年として、後日記憶されるかもしれない。

古代にそうだったように、詩篇2篇は後世にもよく旋律がつけられて歌われた。ヘンデルのオラトリオ「メサイア」の40曲目のベースアリアが最もよく知られた曲である。英ルネサンス音楽を代表する作曲家・トマス・タリス(1505〜1585)が作曲した聖歌もある。20世紀初頭、英作曲家・レイフ・ヴォーン・ウィリアムズはこの聖歌のテーマ旋律にちなんで、「トマス・タリスの主題による幻想曲」を作曲した。繊細に分けた弦楽パートが、まるでオルガンのように深い音の波を醸し出す。

ソウル市立交響楽団が5月29日、ソウル芸術の殿堂のコンサートホールで開催したコンサート「#おかげで」でこの曲を演奏した。限られた人員の観客の前で演奏する予定だったが、首都圏で新型コロナウイルスが拡散したため、観客なしでオンライン中継した。「舞台上の距離置き」も導入した。演奏者たちは1.5メートル以上互いに離れて座り、演奏者たちと指揮者・オスモ・バンスカはマスクを着用した。後半のモーツァルト交響曲39番に参加した冠岳演奏のそれぞれの周辺には、透明版も設置した。

指揮者・バンスカは、気持ちが最も複雑だっただろう。彼はソウル市立交響楽団のほか、米ミネソタ交響楽団の音楽監督も務めている。この楽団があるミネアポリスは最近、警察が黒人ジョージ・フロイドを逮捕中に死亡させた事件で炎に包まれている。今日「列強」は、内部問題でも大きな病気を患っている。ヴォーン・ウィリアムズが編曲したルネサンス聖歌の深い音響が、思索を超えて緊急な祈りのように聞こえてきた。

このコンサートは、ユーチューブ「ソウル市立交響楽団」チャンネル(www.youtube.com/watch?v=gZ90FEgq-9Q)で鑑賞できる。ヴォーン・ウィリアムズの「トマス・タリスの主題による幻想曲」原曲も、ユーチューブで主題語「tallis why fum‘th in fight」で検索すれば聞くことができる。


ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com