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視覚障害が「米大統領奨学生」なった秘訣

視覚障害が「米大統領奨学生」なった秘訣

Posted May. 30, 2020 08:28,   

Updated May. 30, 2020 08:28

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視覚障害を持つ米国の韓国人イ・ヨンウンさん(19・ニュージャージー州ノーザンバレー高卒業)が、ホワイトハウスが選ぶ「大統領奨学生」に選ばれたというニュースが伝えられると、韓国から応援メッセージが溢れた。ごく少数は「賢く生まれたからだ」と考えた。ヨンウンさんは、「私も成功した人の話を聞いた時、そう考えたことがある。実際に自分がそうなると、そうでないことがわかった」と話した。

 

ヨンウンさんは2001年、慶尚南道晋州(キョンサンナムド・チンジュ)で先天性網膜疾患の「レーバー先天性黒内障」を持って生まれた。両親は100日頃、子どもの目がひどく揺れているのを見ておかしいと直感した。大きな病院で、子どもが大人になって目が見えなくなる可能性もあると医師に言われ、衝撃を受けた。子どもが小学校に入学すると、両親は治療と教育のために米国行きを選択した。

 

ヨンウンさんは、視野がトンネルのように狭く、物が曇ってしっかり見ることができない。一人では走ることも、文字をまともに読むこともできない。それでも父親の手を握ってランニングをする時は、清々しい気持ちになれた。ヨンウンさんは2009年、米バージニア州の小学校に転校し、ランニングクラブに加入した。知らない人と一緒に走ることは怖かったが、友達に対して信頼するようになった。

自信を得たヨンウンさんは、学生会の活動に挑戦した。学校生活を写真などで記録し、校紙に載せる「ヒストリアン」に応募した。友達は、10人の応募者のうち積極的な性格のヨンウンさんを偏見なく選んだ。学校は、ヨンウンさんに敗れて脱落した友人1人をパートナーにした。この友達は、目が不自由なヨンウンさんに写真を撮る場所を教え、撮った写真の感想も聞かせた。2人が一緒にするので、一人では難しいことも容易くやり抜くことができた。

 

ヨンウンさんは、点字やオーディオブックで勉強をする。それでも2位で高校を卒業するほど成績優秀だった。ヨンウンさんは学校が採用した「点字先生」の助けを受けたと話した。勉強に必要な資料やグラフを電子メールで送れば、先生が点字にしてヨンウンさんに送り返した。ニュージャージー州は、ヨンウンさんのような視覚障害の学生に点字キーボードがついた「点字コンピュータ」も支援した。

ヨンウンさんは2017年、目になる一生の友人にも出会った。ある視覚障害者支援非営利団体の支援で盲導犬「マギー」を譲り受けた。盲導犬一匹を訓練するのに約5万ドル(約6200万ウォン)の多額の費用がかかる。この団体は、米国の民間人の寄付を受けて、視覚障害の学生を支援している。

ホワイトハウスは、障害から立ち上がって学業や課外活動で頭角を現したヨンウンさんを移民の子どもという偏見なく、360万人の高校卒業生のうち0.004%(161人)に与えられる「大統領奨学生」に選んだ。

ヨンウンさんは今年9月、プリンストン大学に進学する。卒業してワシントンで働く夢を持っている。政治が世の中を良い方向に変えることができると信じるからだ。自らを「政治ナード(Nerd、オタク)」と呼ぶヨンウンさんは、「すべての人は身体、精神、言語などで困難を1つは持っていると考える。すべての人が希望を持って立ち上がれるよう政治に関わる仕事がしたい」と話した。

 

ヨンウンさんは自分の意志と家族の助けで立ち上がった。そのヨンウンさんを力強く走れるように背中を押したのは、障害者に配慮して機会を与える米国の隣人と学校、市民団体、政府システムではないだろうか。0.004%の人材は空から降って来るのではなく、このような社会的資本によって育つ。韓国社会に障害から立ち上がって走る多くのヨンウンさんが出てくることを願う。


朴湧 parky@donga.com