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別れた恋人の肖像

Posted November. 04, 2021 09:10,   

Updated November. 04, 2021 09:10

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黄金色のドレスを着た若い女性が、首を切られた男の髪をつかんで立っている。暗やみに隠されたもう一方の手には刀を持ち、年老いた女中が後ろから彼女を見ている。一目で見ても、彼女は敵将の首を切り、祖国を救ったイスラエルの英雄、ユディトだ。ところが、絵の中のユディトは、勇敢な英雄の姿ではなく、魅惑的な女性の姿で描かれている。そのうえ殺人を犯した人の表情にしてはあまりにも淡々として見える。画家はなぜこのような姿で描いたのだろうか。

旧約聖書に出てくるユディトの物語は、首切りという刺激的な素材に愛国的メッセージまで盛り込んでおり、数世紀間、欧州の画家らの間で大人気となってきた。17世紀、フィレンツェで活動した画家クリストファーノ・アローリもこのテーマを何度も繰り返して描いた。若くしてメディチ家の宮廷画家になったが、それほど注目されなかった彼は、このユディトの絵で一気に名声を得た。

絵の中のモデルは、画家自身と別れた恋人のマリア・デ・ジョヴァンニ・マチャフィだ。二人の恋愛は熱かったが、終わりがよくなかった。絶世の美人だったマリアは、アローリの金を使い、ついに彼を貧困に追い込んだ。悲惨さに耐えられなかったアローリは結局、関係を清算し、彼女をモデルに描いた聖女の肖像画2点も破ってしまった。2人の仲が悪くなったのは、マリアの母親のせいだと思っていたアローリは、殺人の助力者である女中の顔にマリアの母親を描いた。

失恋の傷が深すぎたのか。絵の中のアローリは首を切られたまま苦痛に歪んだ表情だ。依然として苦しんでいる証拠だ。一方、高貴さを象徴する黄金色のドレスを着たマリアは、若くて魅惑的な女性として描かれている。服に一滴の血もつけずに、上手に男を殺すことのできる大胆な女性でもある。アローリはかつて愛していた恋人を責めたくはなかったようだ。その代わりに美しくて高貴で大胆な女性の姿をキャンバスに刻み、死ぬまで大事にした。

美術評論家