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新しい時代の肖像

Posted April. 22, 2021 08:21,   

Updated April. 22, 2021 08:21

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「私はあなたを描かなければならない!必ず描かなければなりません!」1926年のある日、ベルリン市内を歩いていたある女性にオットー・ディクスが近づき、突然放った言葉だ。女性の名前はシルヴィア・フォン・ハルデン。32歳のドイツ人ジャーナリストで、詩人だった。当時、将来を嘱望されていた画家のディクスは、なぜ彼女を描こうと思ったのか。

ディクスは、第一次大戦後のドイツ社会の狂気と混乱、腐敗した政治の現実を客観的かつ写実的に描写しようとした画家だ。戦争は彼の人生と芸術に大きな影響を与えた。第一次世界大戦に従軍し、生死の峠を何度も越えた彼は、戦場で目撃した凄惨な場面を絵の重要な主題とした。初期には、肖像画家として名声を得たが、傷痍軍人や街の売春婦、様々な知識人をモデルに描いた。

その中でジャーナリストを描いたこの肖像画が最も有名だ。ベルリンのカフェの片隅、丸テーブルの前でハルデンは男のように短い髪で、足を組んで座り、タバコを吸っている。黒チェック模様の赤いワンピースはスタイルが全くあらわれない筒形だ。片眼鏡やタバコ、ニコチンで変色した黄色い歯や指のシミは一般的に男性性を象徴する装置だ。実際、彼女は同僚男性と同じように酒とタバコを好み、容姿を気にする暇もなく忙しく記事を書き、近眼になったようだ。結婚にも全く関心がなかった。職業がジャーナリストなのに、テーブルの上にはノートが1冊もなく、カクテルグラスとタバコ、マッチだけが置かれている。焦点を失った精気のない目に暗く濃い化粧としかめた表情は、人生の疲れと暗い政治的状況を暗示する。

「あなたのすべてがこの時代を代弁します」ディクスが彼女にモデルを頼んで言った言葉だ。伝統的な女性像のすべての慣習を捨てたハルデンは、戦後ドイツ社会に新たに登場した野心に満ちた新女性であり、暗鬱さの中でも変化する新時代を代表する人間像ゆえに選ばれたのだった。

美術評論家