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火星でジャガイモだけで耐えたという話は嘘

火星でジャガイモだけで耐えたという話は嘘

Posted February. 20, 2021 07:41,   

Updated February. 20, 2021 07:41

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映画「オデッセイ」(2015年)で主人公マーク・ワトニーは、自身の排泄物をもとに用意した土で栽培したジャガイモを食べ、火星で生存する。宇宙服に小さな穴があいただけでも死に至るこの厳しい惑星で、人間の文明の原型と言える農耕が可能だということだ。食べることが解決されるなら、人間の火星での居住は夢ではないかも知れない。

しかし、米航空宇宙局(NASA)の天文ライターだった著者は、これに反論する。火星でジャガイモだけで生存できるというのは嘘ということだ。過塩素酸塩毒素が含まれた火星の土壌で光だけでジャガイモを栽培することはできない。そのうえ、毒素を除去したとしても、ジャガイモからは十分な栄養を得ることができない。医学的観点で、ジャガイモだけ摂取すれば1年もたたずにビタミン欠乏による夜盲症、クル病、神経損傷、頻繁なアザに苦しむことになる。ワトニーがサツマイモを栽培したなら、ジャガイモの約2倍の栄養を得ることができる。

この本は副題(「宇宙旅行が自殺旅行にならないための案内書」)からも分かるように、宇宙旅行の現実的な困難を科学的、経済的事実をもとに詳しく分析している。

最近のことでは、モスクのスペースXで代表される宇宙旅行のバラ色の展望を破る内容だ。一例として、米ソの宇宙競争が激しかった1960、70年代、米国では20世紀内に火星探査を推進する動きがあった。しかし、21世紀に入った今でも、火星探査はまだ人間が見通せる圏内に入っていない。なぜか。

著者は、現実世界の政治、経済状況が宇宙旅行に絶対的な影響を与えたと指摘する。一例としてニクソン米大統領は、アポロ13号の酸素タンク爆発事故の直後、1972年の大統領選を控え、アポロ16、17号発射計画を全て取り消そうとした。宇宙事故が大統領選に不利に作用する可能性を懸念したためだ。しかし、著者が宇宙旅行の可能性を完全に否定したわけではない。

著者は、「もし中国が2032年までに火星に定着地を建設すると発表するなら、米国は何としてでも31年までこれを建設するために資金を動員するだろう」と指摘した。


金相雲 sukim@donga.com