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[オピニオン]キャリー姉と思い出のキャロル

[オピニオン]キャリー姉と思い出のキャロル

Posted December. 20, 2019 08:03,   

Updated December. 20, 2019 08:03

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「なんだか今年は、年末の雰囲気がしないな」

先日、忘年会を後にしたAが語った。今や毎年、誰かが必ず言う言葉になった。

「今年は、年末の雰囲気がしないね」

真っ暗な夜のキャンバスに吐き出したAの白い息は、お伽話の吹き出しマークになる。たちまち思い出がゆらゆら宿る。もちろん想像の世界だけど。

想像と思い出の中、年末の街にはいつもキャロルが流れている。違法コピーのカセットテープを売っていた屋台、可愛らしいクリスマスカードを置いていた文具屋さん、大きな交差点に構えた大型デパートの入り口にはスピーカーがあった。「きよし、この夜」「ジングルベル」「もろびとこぞりて」…。このような古典的キャロルでない場合もある。KPOPだとMr.2の「White Winter」とかカン・スジの「ひとりぼっちの冬」などが銀色に包まれた街を背景に…。ただ聞こえてくるのではない。響き渡り、エコーになる。あるいは鳴り響く、といった表現が適切かもしれない。少なくともキャロルに関しては…。

#1.もともと韓国でのキャロルの黄金期といえば1980年代。ジングルベルの替え歌「走れそりよ、雪の中を、どうしよかな」をずっと迷っている与太郎ヨングのキャロルは50万枚以上売れた。当時のお笑いコントは年末になるとキャロル合戦だった。キム・ミファ、キム・ハングの演ずる「ひょっとこ夫婦キャロル」、「ネロ25時」のチェ・ヤンラク、イム・ミスクのキャロルは御生誕とコントを聴覚で合体させた。

#2.キャロルの歴史は4世紀、ローマに始まる。クラシック音楽の時代を経て種々のキャロルが世に流れ出た。教会と聖堂ではみどりごイエスの御生誕を祝うのにふさわしい歌は毎年、欠かさず必要だった。近代以降は19世紀、米国の作曲家ジェームズ・ピアポントが作詞作曲した「ジングルベル」がキャロルの世界「ゲーム・オブ・ストーンズ」を100年以上牛耳っていた。キャロルは家庭で職場で、雪の舞う戦場に流れ響き渡った。

#3.そしてついに現れた。1994年11月1日、米国歌手のマライア・キャリーはキャロル・アルバムの「メリー・クリスマス」を発表した。それはキャロルの世界、キャロルの歴史を変えた。シングルはこれまで世界中で1500万枚売れた。人類史上最も多く売れたキャロルのアルバムだ。特に収録された曲のうち、「恋人たちのクリスマス( All I Want for Christmas is You)」は「傑作」だった。シンガソングライターであるキャリーと作曲家ウォルター・アファナシェフが一緒に作ったこの曲は、数百年間歌われてきたキャロルを一つずつ押しのけて、ついて人間キャロル歴史の代名詞となる。

#4.「最近は年末の雰囲気がしない」という言葉の半分に「最近、街でキャロルを聞かない」がにじみ出ている。1990年代、ウォークマンが急激に普及し、2000年代MP3フォーマットやインターネットでのファイル共有、音源サービスなどの続出で、音楽の鑑賞はごく個人的な経験になった。外出しようものなら、財布は忘れても「オタマ(ワイヤレスイヤフォン)」は必ず持って出るというくらい。街の音楽は力を失っている。

#5.昨日の話題でこんなことまで出た。ある移動通信会社が音源サービス会社と協同で、全国の小商工人にキャロルを含む音源ストリーミングサービスを年末年始限定、1ヶ月間無料で提供することにした。ソウル中区明洞の小規模売り場にはブルートゥース・スピーカーを提供し、ソウルの主な商店街を走る「キャロル・ドラック」も運営する。

#6.キャリーの「恋人たちのクリスマス( All I Want for Christmas is You)」が21日、ビルボード・シングルチャート1位を記録した。意外なことに発売後25年ぶりの出来事だ。この新生キャロルは年を重ねる毎に地境を広げている。2003年、映画『ラブ・アクチャーリー』に登場、もう一度人気に火がついた。その後、毎年、12月になると各国のチャート上位にゴーストのように現れた。2017年12月、ビルボード・シングルチャート9位まで上り詰めた。昨年、クリスマス・イブには音源サービス「スポティファイ」で歴代24時間中最も再生の多い曲に選ばれた。1日の再生回数が1080万回だ。

#7.1994年冬、「キャリー姉」は普通に絶好調だった。1993年のアルバム「ミュージック・ボックス」に名曲「HERO」を収録、大成功を収めたところ。キャロルのアルバムなど、落ち目のミュージシャンが金目当てにやることと思ったキャリーはレコード会社の提案を最初は拒んだという。そこで単なる「二番煎じ」ではなく、3曲の新しい創作曲を入れることにした。その一つが「恋人たちのクリスマス」だった。キャリー姉の時代は去ってもキャロルの時代はまだ終わらない。望みが叶うと言われる季節だ。


イム・ヒユン記者 imi@donga.com