Go to contents

無計画が最高の幸運だ

Posted October. 25, 2019 09:02,   

Updated October. 25, 2019 09:02

한국어

最近400万人の観客を超えたひどく不快な映画「ジョーカー」は、バットマンシリーズの中で最高の秀作「ダークナイト」(2008年)に登場する前代未聞の悪役ジョーカーを主人公にした外伝だ。ゴッサムシティの大道芸人アーサー・フレックが社会の冷遇と抑圧の中で疎外された者たちの王であるジョーカーとして誕生する過程を盛り込む。ジョーカーの存在を巡って、映画ファンの読者から寄せられた質問のうち2つを選んで回答する。

Q.「ダークナイト」のジョーカーと「ジョーカー」のジョーカーのうち、どの奴のほうがもっと悪い奴なのでしょう?

A.ドラマ「椿咲く頃」の連鎖殺人鬼「カブリ」の正体は誰かと尋ねるのと同じくらい難しい質問ですね。同じ奴の誕生期(「ジョーカー」)と全盛期(「ダークナイト」)のうち、どいつがもっと悪い奴かということですね。質問をこのように変えてみましょうか。「どいつがもっと正気でないだろうか」

「ジョーカー」の主人公アーサーは、本当の気違いではありません。なぜか?クレイジーなことをするようだが、実は、彼の行動にはそれなりの理由があるからです。つまり、「ジョーカー」のジョーカーは、因果関係に基づいて動く非常に論理的なやつだということです。考えてみてください。ジョーカーはもともとお金がなく、「コネ」もない典型的な社会的少数者でした。しかし、精神的・身体的虐待と疎外を栄養にして怪物に成長します。子供の頃、母の恋人から極限の暴力を受け、脳を痛めて記憶を失い、「あなたはゴッサム市で最も裕福なトーマス・ウェインの隠し子」と告げた母も、実は妄想の精神疾患者でしたね。さらに悪いことの真髄を示すのは、めちゃくちゃになった人生のせいで悪役に変わっていくという物語です。これを裏返したら、こんなに気が狂いそうな成長過程と環境でなかったら、彼はジョーカーにならなかっただろうという推論が可能ですね。

しかし、「ダークナイト」のジョーカーは質的に異なる奴です。名実共にリアルな「気違い」ですね。こいつには理由がありません。自分の口元が裂かれた理由を説明する際も、その事情が毎回異なります。最初は子供の頃の父の虐待のせいだとしたが、後は自分の顔を笑顔にするために、自ら行ったことだと言います。こいつは自分の口から吐き出す言葉が事実なのか嘘なのかさえ見分けがつきません。いや、事実と偽りの概念そのものがない奴ですね。さらに、自分が悪いことをする理由すら知りません。銀行で強盗を働き、お金を山のように積み上げておいて、こいつはお金に火をつけてしまいます。それとともに、このようなとんでもない言葉を口にします。「お金は重要じゃない。メッセージのほうが重要だよ」。すごい。ビジョンのない悪役が一番怖い悪役ですね。

世の中で最も恐ろしいことは、理由もなく起こることです。妻が離婚を要求しながら、「あなたはお金も稼げないし、醜い上、お腹も出ているし、セクシーでもないから」と理由を挙げるならうなずけるが、「私たちは別れるべきだよ!中国発粒子状物質はもはや我慢できない!」とおかしなことを言うなら、身の毛がよだつのと同じことですね。忘れないでください。事情のある悪役は、本当の悪役ではありません。同情と共感を誘発するから。

Q.「ジョーカー」を見て、映画「パラサイト」が浮かびました。貧富対立の階層問題を扱うという点で、二つの映画は似ているという気がしました。

A.目の付けどころがすごいですね。あいにくなことに、今年の世界3大映画祭の一つであるカンヌ映画祭は「パラサイト」に、ベニス映画祭は「ジョーカー」に最高賞を与えた事実だけを見ても、階級対立がどれほどグローバル問題であるかを推測できます。ここで面白い点を一つお知らせましょうか?「ダークナイト」と「パラサイト」で主流と非主流を一刀両断する素晴らしい境界線があるという事実をご存知ですか?まさに二つの映画のキーワードである「計画(plan)」です。世の中は根源的には、金持ちと貧乏人に分かれるのではなく、「計画がある者」と「計画がない者」に分けられるという世界観ですね。あ、なんて馬鹿な言葉かって?

「ダークナイト」のジョーカーは、このような自己告白をします。「私が計画なんていうものを立てる奴に見える?私は車を追っていく犬と同じだよ。ただ本能のままに行動する。計画を立てれば、寝業師に過ぎない。私は寝業師ではない。混乱の使徒にすぎない」。もうご存知でしょう?主流社会をなすすべてのシステムは、計画に基づいて動くので、逆説的にも抜け穴が内在するしかないという主張ですね。自分のように計画自体がない奴こそ、最も完全な存在だというのです。

「パラサイト」の宋康昊(ソン・ガンホ)家族も同じでしょう。「最も完全な計画は無計画だ」という創造的人生観でだらだらと生きてきた宋康昊一家の姿は、貧しくても和気藹藹で幸せでした。しかし、「家族全員が金持ちの家に侵入して、パラサイトのように血を吸って食べて生きよう」という「計画」というものを、息子が生まれて初めて立てたことで、家族の運命に食い違いが起きて破局を迎えます。ああ、計画とは、主流社会の専有物であり、動作の原理なのに!「息子よ、お前は計画があるんだ」という宋康昊の名台詞は、結局感心ではなく、彼らに迫ってくる血の運命の不吉な予知夢だったのです。

読者の皆様。ジョーカーと宋康昊が教えてくれます。最近のように狂った世の中は、計画なしに生きるのが幸せへの近道だということを。無計画が最高の幸運です。


イ・スンジェ記者 sjda@donga.com