作家７人が隠しておいたファッションにまつわる秘密

強迫的に新しい靴だけ履く男Ｋがいる。彼は、「人生は、代用品の祭りだ」、「私は私だという人の最も古い代用品だ」という二つ文を懐に暖めて生きている。彼の秘密は、彼が１３歳の時に履いた運動靴の中に隠れている。

Ｋには、「頭が良くてやさしい」友人がいた。その友人は背丈は小さかったが、足のサイズが似ていたため、お互いに靴を履き替えたりもした。２人は、ソウルに精密知能検査を受けるために行くバスの中でも、靴をお互いに履き替えた。

Ｋは、友人に告白する。出生届けが遅れて、１３歳ではなく１４歳であり、だから知能指数が高く出てきたと。本当に頭が良くてやさしい子は、ほかならぬお前だと。しかし、その告白直後、バスが崖から転落し、友人は死亡し、Ｋだけが助かる。Ｋは、やさしくて頭のよい子供たちは大人になれないという事実に金縛りになっていきながら、新しい靴ばかり履くことになる。

この本に収録されている殷熙耕（ウン・ヒギョン）作家の短編小説「代表品」の内容だ。このプロジェクトの小説集は、文学と知性社とファッション雑誌・アレーナオンム＋が手を取り合って、小説とファッションのコラボレーションで行った。有名小説家７人が参加して、４つのテーマの「手にする」、「書く」、「履く」、「着る」のうち一つを選んで、短編小説一本を書きあげ、雑誌とインタビューを行った。

小説家らは、作文大会で競うかのように、ファッションの小物を決めて、各自の色合いで短編を書いた。キム・ジュンヒョク（「紙の上の湯船」）は、失くした皮のカバンを、鄭梨賢（チョン・イヒョン、「箱の未来」）は、レイバンボーイングサングラスを、チョン・ヨンジュン（「ミッドウィンター」）は、毛帽子を、ピョン・へヨン（「アリスの隣の家に住んだ」）は、靴の下敷きが残した足跡を、ベク・ガフム（「君の友人」）は、ハイヒールや短靴、ソン・ボミ（「アンフォゲッタブル」）はスーツを選んだ。

長い余韻は、「記憶」から出てくる。「箱の未来」では、初の男の記憶のため、レイバンボーイングサングラスだけを見れば、胸がどきめく５３歳の女性が、「君の友人」では、見知らぬ女の靴を巡り、「忘却の中に沈んだ時間」まで戻しながら、記憶を思い浮かべようとする女性が登場する。

あなたの記憶の中にはどんな小物があるか。この本を読みながら、ファッションを消費したいという欲求よりは、同じテーマで一度書いてみたいという欲求のほうが頭をもたげるのを見れば、私にはやはり、ファッションよりは文学のほうが大事らしい。