もし、正常な国のトップが、現在、中国を訪問中の北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記のように、海外歴訪や出張に行けば、彼は世論の袋たたきに耐えられないだろう。公務性格の外国訪問というよりは、あたかも皇帝の遊覧のようなスケジュールを送っているからだ。24日、訪中5日目を迎える金総書記は、大規模な随行員を従えたまま、手厚いもてなしを受けている。
金総書記は20日午前、吉林省・圖們から中国入りした後、𩩲龍江省・牡丹江から北山公園や鏡泊湖の抗日遺跡地を訪問し、翌日午前、吉林省・長春に到着する時まで、特別列車に止まった。長春では、午前中、自動車メーカーに立ち寄り、昼食宴会に出席後、列車で翌日夕方までの30時間あまりを特別列車で過ごした。69歳という年齢にも関わらず、このようなスケジュールをこなすことを披露し、健康を誇示する狙いだという見方もあるが、はなはだ非効率だ。
23日、江蘇省・揚州では、超豪華な迎賓館に宿泊し、午前は市内エネルギー会社1社を訪問、午後は宿舎周辺の大手スーパーに30分ほど立ち寄った。24日も同様に、南京で電子メーカー1社に立ち寄った後、列車で現地を離れた。
金総書記の訪中目的は、経済援助要請という見方もある。北朝鮮の核実験による国際制裁に貧困期まで重なり、食糧難が深刻なためだという。しかし、そののんびりかつ豪華なスケジュールを見れば、誰がそのような緊迫感を感じることができるだろうか。金総書記を随行する70人ほどの公務員が、中国側のパートナーとせわしく政策交渉を行うなど、仕事をこなしたというニュースも聞こえてこない。
大統領など、国家指導者が外国を訪問する際は、国内でよりさらにせわしいスケジュールをこなすのが一般的だ。短時間で数多くの人と会い、多くのイベントに参加する。国民の公僕として、国の税金で行く出張のためだ。大統領の「セールス外交」が美徳になったのは、海外で営業マンのように忙しく動き回ることが共感を得るためだ。
「牽制を受けない独裁者」でなければ、到底組みそうもない旅路を金総書記は楽しんでいる。飢えに苦しんでいる北朝鮮住民が、このような実状を目にしたら、果たしてどのような気持ちになるだろうか、胸が張り裂けそうな思いだ。